痒い!!痒すぎます!!
『ノミアレルギー性皮膚炎』
ノミに刺された場所の痒みだけでなく、ノミの唾液による全身的なアレルギー反応。
ノミはよく知られた寄生虫です。
体長2〜3mmの小さい体ですが、非常に厄介なヤツなんです。
今回は、
ノミが引き起こす犬猫の病気
ノミが引き起こす人の病気
ノミの駆除の仕方
の勉強です。
もくじ
ノミによる病害
犬猫の病気
ノミアレルギー性皮膚炎
動物の3大アレルギーは
- アトピー性皮膚炎
- 食物アレルギー
- ノミアレルギー性皮膚炎
と言われています。ノミに吸血されると痒いってことを知っている人は多いですが、このノミアレルギー性皮膚炎は
メチャクチャ痒い
状態です。
もちろんその原因は『ノミ』です。
ノミは世界中で約1300種類がいるとされていますが、日本では約80種類が知られています。
我々が見るノミのほとんどはヒトノミ科のネコノミとイヌノミで、宿主特異性が低くそれぞれ人も犬も猫も吸血します。(現在の主流はネコノミ)
ノミの唾液に含まれる抗原に対して動物側で感作が起こると、全身に強いアレルギー反応が起こるようになります。これは例えば1匹のノミに対しても起こる可能性があります。
さらに言うと、ノミが見つからないけどノミアレルギー性皮膚炎の場合もあります。
症状としては
腰が痒い!!
ノミアレルギー性皮膚炎の多くは腰や尾を痒がるのが特徴です。
ただし、猫の場合はより複雑で粟粒性皮膚、自己損傷性脱毛、好酸球性局面など様々なパターンが見られます。
診断としては、まずは典型的な症状があるかどうか。
次にノミ取り櫛でのノミやノミ糞の確認。
ノミ自体がいなくても、黒っぽい砂みたいなものが取れたらティッシュなどに乗せて、水などで濡らし赤く滲んで来ればノミの糞(ノミは血液を餌としているため)だと確認できます。
もしもノミが見つからなくても先ほど言ったように、ノミアレルギーの可能性は残ります。
ノミ・ノミ糞が見つからないけど、ノミアレルギー性皮膚炎が疑わしい場合はアレルギー検査(ノミ唾液抗原を用いた皮内試験、IgE検査)を補助的検査として行うこともできます。
局所のかゆみ
ノミ唾液による全身性のアレルギーが起きなくても、局所性の刺激や痒みがあるためにその部位を掻いたり、かじったりすることで2次的に細菌感染が起こり皮膚炎を起こすことがあります。
貧血
子犬や子猫では、多数のノミが寄生している場合にノミの吸血による貧血が起こることがあります。
瓜実条虫(サナダムシ)
ノミの幼虫が瓜実条虫の卵を食べることで、ノミ体内で瓜実条虫が発育します。
犬猫はノミに吸血されると痒みがあるために、“Corn cobbing(とうもろこしをかじる様な噛み壊し)”をする際にノミを食べたり、グルーミンングの際にノミを食べてしまうことがあります。
瓜実条虫の卵を宿したノミを食べることで、犬猫の小腸に瓜実条虫が寄生します。
瓜実条虫の成虫は全長50〜70cmにおよび片節と呼ばれる米粒の様な構造が連なったような虫です。
片節は古くなると成虫から離断されて、糞便と共に排泄されます。
排泄された片節は活発に伸縮しながら糞便表面を運動しているために発見されやすく、
と来院されるケースもあります。
犬猫では下痢や嘔吐、食欲不振を起こすことがあります。
人の病気
猫引っ掻き病
ノミが猫から猫へと運ぶ“バルトネラ”という細菌が原因で起こる病気です。
バルトネラに感染した猫に引っ掻かれたり、噛まれたりすることでその部位の化膿やリンパ節の腫脹、発熱、頭痛などの症状が現れます。
ノミ刺咬症
人もノミに吸血されると激しい痒みが起こります。また、患部を掻いて細菌感染を起こし水ぶくれの様になることもあります。
ペスト Plague
ペストはYersinia pestisという細菌により引き起こされる人獣共通感染症です。
ペスト菌は本来ネズミ(げっ歯類)とノミの間で感染サイクルができています。
人が偶発的にペスト菌を保有するネズミと接触したり、感染ノミに吸血されたりすることで人への感染が成立し、ペスト患者からの飛沫感染により周囲の人への感染が広がっていきます。
ペスト菌の感染経路は3種類
- ペスト菌に感染したネズミやノミなどに噛まれる事による感染
- 空気中に漂うペスト菌を含んだ飛沫を吸い込むことによる飛沫感染
- 感染者や動物の死骸や感染組織への接触による感染
に分けられます。
ノミに噛まれてペスト菌が体内に入り込む『腺ペスト(リンパ腺(節)に入り込むため)』、腺ペストから肺に以降したり、飛沫を吸い込む事で起こる『肺ペスト』、ペスト菌が全身に回る『敗血症ペスト』など3タイプの病型に分けて呼ばれる事がありますが、一連の動態のためはっきり区分できるわけではありません。
進行してしまっている『敗血症ペスト』と呼ばれる状態では出血傾向が見られる事があり、足先や指先、鼻などの皮膚に出血班が生じる事があります。これが黒っぽいあざの様に見えることから中世ヨーロッパでは『黒死病』と呼ばれたりもしたようです。
ノミのライフサイクル
卵
ノミの卵は直径0.5mm程で白くツルツルとした真珠様の輝きをもっています。
ツルツルとして粘着性が無いために、犬猫の体表で産卵された卵は毛に絡まることなく落下します。
落下した卵は動物の寝床の周辺や、カーペット、ソファーの隙間に入り込んだり、ホコリと一緒に部屋の隅にたまります。
温度18.3℃以上、湿度50%以上で孵化する事ができます。
幼虫
ノミの幼虫は1〜2週間の間に2回の脱皮を繰り返し成長します。
幼虫は目は見えていませんが、光や重力を感じ暗い方へ・下の方へ移動します。また、乾燥に対しても敏感なためカーペットの隙間や家具の裏、畳の隙間などに入り込みます。
幼虫は吸血することは無く、成虫の排泄物や人の食べ残し、瓜実条虫の卵などを食べています。
温度13℃、湿度75%で34日以内に50%が次のステージの蛹(さなぎ)になります。
温度や湿度が上がればそのスピードが早くなります。
蛹(さなぎ)
2回の脱皮をした幼虫は3回目の脱皮を行うと蛹(さなぎ)となります。
さなぎは数日から数週間、繭の中で待機して外部からの直接的な刺激(二酸化炭素、振動、熱、圧力など)が引き金となって孵化します。
成虫
体調は2〜3mm程度で扁平な形をしています。
とてつもない跳躍力をもっています。
一回の跳躍で水平方向に40cm、
垂直方向に15〜25cmもの跳躍が可能です。
二酸化炭素、熱および振動を触覚で感じる事ができ、これにより吸血対象を感知してとてつもない跳躍力で飛び移ります。
動物の体表に飛び移ると5分以内に吸血を開始します。
吸血後36〜48時間で産卵するようになります。
産卵数は1日平均30個ほどですが、多いものでは50個もの卵を産卵します。
ノミの一生涯では2000個以上の産卵をすると言われています。
そして、ピークシーズン(梅雨から夏)では
卵から成虫になるまで最短12〜14日!!
ノミのライフサイクルで最も大事なことは、
我々が犬・猫で見つけたノミの成虫は、
ノミ全体の氷山の一角
で成虫の10〜20倍の卵、幼虫、さなぎが予備軍として周辺環境にいることです。
家でできること
ノミ予防の徹底
体に多量のノミがいる場合はまずはシャンプーすることをオススメします。
毛に仮死状態のノミが絡んでいるときはノミ取りシャンプーでそっと取ってあげてください。
下に『犬のアトピー性皮膚炎』の記事で載せた図を再度載せます。
一緒に取り組みたいのが、
滴下剤や内服薬によるノミ予防です。
ほとんどの薬剤はノミ・マダニ予防薬としてセットになっていますね。
様々な薬剤が開発・発売されていますが、基本的には節足動物の神経系に作用する薬剤で、犬・猫・人など脊椎動物への影響はありません。
滴下剤
滴下剤は、犬猫が舐めることのできない場所(多くは背中の肩甲骨の間)に垂らすものです。
しっかり毛をかき分けて、
直接皮膚に垂らす必要があります。
滴下剤にも体表分布型と体内吸収型があります。
ここでは体表分布型の話をします。
滴下剤を垂らすと、犬猫の体表の皮脂を伝わり全身に薬剤が広がり、皮脂腺に蓄えられるようになっています。
皮脂腺に蓄積された薬剤が少しずつ体表に放出されることで効果が持続するようになっています。
吸血防止効果があるかも
皮脂に含まれた薬剤のバリアにノミ・マダニが接触することで駆除できるという効果が期待できます。
ノミであれば急速に殺滅することができ、あくまでも可能性ですが吸血する前に駆除できる可能性があります。
ただ、ノミは寄生してから5分後には吸血しているので難しいかも。。。
体表の皮脂に依存しているために、薬物濃度に濃淡ができてしまいます。
そのため、薬剤に接触しないノミ・マダニには効果が出ません。
シャンプー直後の場合は、被毛は乾いているけど実はまだ皮膚表面が濡れているということがあります。そこに滴下剤(薬剤:フィプロニル)を垂らすと薬剤が結晶化して析出してしまい効果がなくなってしまうことがあります。さらにシャンプーによって皮脂が減ってしまっていると、薬剤が全身に分布できなくなってしまう可能性があります。
滴下剤の場合は、皮膚の弱い犬・猫では溶媒による皮膚炎が起こることがあります。
メチャクチャ苦かったのを覚えてます。
動物でも舐めてしまうと、苦さのために一過性にヨダレが出ることがあります。
内服薬
内服後、比較的スムーズに吸収されるので早い駆除効果が期待できます。
安定した駆除効果
ノミ・マダニが吸血を行えば薬剤も吸血することになるため、安定した殺滅効果が期待できます。
内服薬であればほとんどの薬で48時間以内の駆除が可能です。
内服薬だと、おやつ代わりになったり滴下剤と違ってシャンプーも気にしなくてオッケーです。
また、滴下剤であると乾くまで待つ必要がありますが内服薬では気にせずスキンシップがとれます。
ただし、必ず吸血されるというのがデメリットになります。
特にノミアレルギー性皮膚炎のある犬・猫では、すでにノミの唾液に対する感作が起こっているために、少しでもノミの唾液が体内に入ることで強い痒みが生じてしまいます。
ノミ予備軍への対応
ノミが散歩の際についてしまった場合でも、上記の予防をしているのであれば問題ありません。
ただし、予防しているにも関わらずノミがついてしまっている場合は自宅の中にもノミ予備軍が潜んでいる可能性があります。
そんな場合は、環境対策が必要になります。
『環境に潜んだノミをやっつけろ‼︎』
作戦としては2段階作戦です。
第一弾・ノミ予備軍を吸いまくれ!!
卵はツルツルで軽く
ホコリと一緒に部屋の隅へ
ノミをやっつけろ!!
第一弾・ノミ予備軍を吸いまくれ!!
環境に潜んでいる卵、幼虫、さなぎ、成虫の排泄物を機械的に除去します。
つまり、徹底的に掃除機による掃除です。
その際に重点的に掃除機をかける場所は、
- 犬猫の寝床周辺(寝床は定期的に洗濯)
- カーペット・敷物
- ベッド・ソファー・クッション
- 家具の隙間や部屋の隅など誇りの溜まる場所
- 畳
です。
掃除機をかけたら掃除機のパックはすぐに捨てましょう。
そのまま放置すると、そのパックの中で大量の成虫が発生することになります。
第二弾・残党達には化学で勝負!!
機械的に取り除いても
まだ予備軍の残党がいるはずです。
ノミをやっつけろ!!
第二弾・残党達には化学で勝負!!
この化学処置で成虫・幼虫をやっつけることができます。
ただし、卵・さなぎはやっつけることができません。
そこで
数日から数週間してからこの化学的処置を繰り返します。
そうすることで卵やさなぎの状態から成長した幼虫や成虫を駆除することができます。
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- 犬の腰・尾が痒い場合はノミアレルギー性皮膚炎の可能性
- 猫も腰・尾が痒いことがありますが、いろいろなパターンがある
- 人でも猫ひっかき病やペストと関係している
- ノミの予防を徹底的に行う
- ノミが見つかった場合は『氷山の一角』であると考える