リラックスタイムにコーヒー☕️とチョコレート🍫。
人ではチョコレートを食べると神経伝達物質のセロトニンの生成が促進されてリラックス効果があり、他にも食欲の抑制、動脈硬化の予防や血管拡張をもたらし代謝促進など健康にも良い効果が期待できます。
健康に良いチョコレート
知っている方も多いようですが、
犬猫にはチョコレートはあげてはいけません。
チョコレート中毒を起こす可能性があるからです。
今回はチョコレート中毒について勉強していきましょう。
もくじ
チョコレート中毒の症状
- 嘔吐
- 下痢
- 落ち着きがない
- 興奮
- 頻脈
- 震え
- 昏睡
- 痙攣
チョコレートを食べてから数時間から半日ほど経って症状が出ると言われていますが、多くは4〜5時間後からです。食べたチョコレートの種類や包装状態、他の食事を食べたかどうかでも変わってきます。
初期症状としては、嘔吐、下痢から始まることが多いです。
他にも喘ぎ(息苦しそう)、落ち着きがない、失禁、動悸、神経過敏興奮なども見られます。
重度になると、震え、頻脈、不整脈、昏睡、痙攣、場合によっては突然死に至ります。
原因はテオブロミン
チョコレート中毒とは言うものの、中毒の原因となっている物質は『テオブロミン』です。
チョコレートの主原料はカカオ豆ですが、そのカカオ豆の中にはメチルキサンチン類と呼ばれる物質のテオブロミンが含まれています。
テオブロミンの作用は
- 神経の活動を抑制するアデノシン受容体に結合し、興奮を抑える機能を阻害する(車でいう”ブレーキ”を壊す)
- 細胞内でcAMPを増加させる
(車でいう”アクセル”を踏み込む)
メチルキサンチン類にはテオブロミンの他、皆さんの聞き馴染みのあるカフェイン(コーヒーなどに含まれる)やテオフィリン(お茶や紅茶に含まれる)があります。
- ブレーキが効かずアクセルを全開状態
- 神経が常に興奮状態 → 嘔吐、下痢、発作
- 心臓がバクバク → 頻脈、不整脈
- 気管支は拡張 → 呼吸困難
考えただけで怖いですね。
ドーピング
競走馬ではテオブロミンは禁止薬物になってます。
馬に対しても興奮作用があるためです。
何で犬猫ではあげちゃダメなの?
犬猫ではテオブロミンの分解が苦手だから!!
人でも、犬猫でもテオブロミンは肝臓で分解されることは同じです。
違いはその分解速度です。
犬猫はテオブロミンを分解するがゆっくりです。
血液中のテオブロミンの半減期(テオブロミンを半分まで減らすのにかかる時間のこと)は、人では6時間なのに対し、犬では17.5時間となっていて体の中に長く残ってしまいます。そのために、テオブロミンが様々な臓器に影響を長く与えてしまいます。
どの位の量で症状が出るの?
テオブロミンの犬に対する毒性は約100 mg/kgと言われていますが、感受性には個体差があるようです。もっと少なくても症状が出る犬がいます。
20 mg/kgで中毒症状がでるとの報告もあります。
さらに、チョコレート中のテオブロミンの含有量の違いや包装の状態、他に食事を食べたかどうかによっても違いがあります。
8種類のチョコレートのテオブロミン含有量を分析した。
結果として少ないものでは14 μg/g(0.014 mg/g)であり、多いものでは2970 μg/g(2.97 mg/g)であった。【チョコレート製品及びチューインガム中のカフェイン及びテオブロミン含有量の測定;
神奈川県衛生研究所、理化学部】
この分析結果でのテオブロミンを多く含んだチョコレート(テオブロミン量2.97 mg/g)を犬が食べてしまった場合を考えると、
3kgのチワワがチョコレート100gを食べると中毒症状が出る可能性があります。
10kgのビーグルがチョコレート330gを食べる中毒症状が出る可能性があります。
チョコレートの種類によってテオブロミンの含有量が全く違うのでどの程度食べたら症状が出るのか判断するのは難しいです。
最近ではビター系と言われるカカオ濃度が高いチョコレートも多く、そういったものを食べてしまうとこの量よりももっともっと少なくても中毒症状が出る可能性があります。重度になると死に至ります。
こんな犬がいました。
犬がこんなにチョコレート食べないんじゃない?
以前、チョコレートを食べてしまったという犬が急患で来院しました。
飼い主様が『犬にはチョコレートはいけない』ということを知っていたので、帰宅した際に犬がチョコレートを盗み食いしているのに気づき、すぐに来たとのことでした。
処置としてすぐに胃の内容物を吐かせましたが。。。
出るわ出るわ
えっ?まだチョコレート出るの?
大量のチョコレートを吐きました。よくもこんなに食べたもんだねってくらい。
その犬は心拍数も上昇していましたし、翌日下痢もしましたが無事でした。
吐かせた事で吸収するテオブロミンを減らすことができたので助かったのだと思います。
吐かせた後の診察室はしばらくチョコレートの甘い香りで満たされていました。笑
犬も甘いものが好き❤️
犬は甘いものが好きです。
特にチョコレートは乳製品も入っていて、その香りと甘味で誘われます
一方で猫は甘味にはほとんど反応は示しません。ただし、乳製品が好きな猫は多くミルク系のチョコレートでは食べる可能性があります。
診断
診断はチョコレートを食べたかどうかです。
現在の症状がチョコレート中毒を疑わせるものかどうかということになります。
症状をもう一度確認すると、
嘔吐、下痢
興奮、震え、頻脈
痙攣、昏睡
高血圧、不整脈、頻呼吸など
脂肪分が多いチョコレートを食べている場合は、急性膵炎が発症する可能性もあります。
治療
食べてすぐなら吐かせる!!
テオブロミンを解毒する薬はありません。
チョコレートを食べて3時間位であれば催吐処置(吐かせること)や胃洗浄を行います。
催吐処置を行っても全てを出すことはできないために活性炭を投与することもあります。
興奮や痙攣などがある場合は、抗痙攣薬や精神安定剤を使用することもあります。
あくまでも対症療法となります。
家でできる事
動物保険会社アニコム損保の調べによると
犬のチョコレート中毒の診療件数は2016年度に773件であり、2月は105件、3月は90件、11月85件、12月が84件であった。
アニコム損保:家庭どうぶつ白書2018
2月に多いことは誰でも想像がつくと思います。
2月以外でも冬場にも多いことがわかります。
また、同じくアニコム損保の調べによると、誤飲事故の年齢推移を見ると0〜1歳での誤飲事故が多いということです。好奇心旺盛な子犬の時期ではより注意が必要になります。
犬猫は人を観察している
犬猫は人をよく観察しています。寝たふりをして薄めで見ているかもしれません。
美味しそうなものを食べていた場合、それをどこに置いたかをチェックしています。
さらに、犬の嗅覚は人よりも優れているということは誰もが知っていることです。
日本警察犬協会では犬の嗅覚を次のように紹介しています。
一般的に犬の嗅覚は人の1億倍まで感知できると言われていますが、匂いの種類によっても感知能力に違いがあります。
臭気の種類 倍率 酸臭 1億倍 吉草根の香気 170万倍 腐敗バター臭 80万倍 スミレの花臭 3000倍 ニンニク臭 2000倍 【日本警察犬協会ホームページより】
袋を開けたチョコレート、家のどこに置いてもバレバレってことになります。
机の上に置いておいたのに。
袋に入れておいたのに。
これらはチョコレートを食べてしまった犬の飼い主様からよく聞く言葉です。
本当に『まさかっ!!』って状況で食べてしまうのが犬猫です。
注意しましょう。
とにかく
キッチリしまう!!
密閉袋に入れて、引き出しにしまう。
オススメは冷蔵庫にしまうことです。
もしも心臓病の犬がチョコレートを食べてしまったら。。。
先ほどチョコレートを食べた場合、頻脈・不整脈が出ると言いました。興奮状態にもなります。
もしも弁膜症があった場合、相当な負荷が心臓にかかります。
痛んでいる弁構造にどれだけのダメージがあるのか。
想像しただけでも怖い。。。
- チョコレート中毒の症状は、感受性の個体差、チョコレートの状態などで大きく変わる
- 嘔吐・下痢が多いが重度の場合は死に至こともある
- 持病(特に心臓病)があった場合は2次的に重症化することもある
- お菓子はきっちり引き出しにしまう!!
- 冷蔵庫にしまうのがオススメ