犬・猫にネギを食べさせてはいけないってことは多くの方が知っているようです。
ネギを食べてはダメな理由は
ズバリ貧血するから!!
です。
人では
『健康に良い!!』
『血液サラサラになって心筋梗塞・脳梗塞を予防する』
『風邪の時はネギ‼️』
と昔から言われていて、
健康のために積極的に摂取している方もいるのではないでしょうか?
なんで犬・猫にはダメなんでしょう?
今日は犬猫のネギ中毒についての勉強です。
もくじ
犬・猫のネギ中毒の症状
『真っ赤なおしっこがでた!!』
びっくりしますよね。
食べてしまった量にもよりますが、赤や茶色の尿が出ることがあります。
これはヘモグロビン尿といって赤血球が体内で壊れてしまったことを意味します。
多くの場合は食べてしまって1日〜数日で症状が出ます。
症状としては、
元気消失、嘔吐、下痢、
貧血、尿が赤・茶色(ヘモグロビン尿)、呼吸が荒い、粘膜が白い
などがあります。
- 貧血
- 赤・茶色の尿(ヘモグロビン尿)
- 元気がない
- 嘔吐
- 下痢
- 呼吸が荒い
- 粘膜が白い
赤血球が壊れてしまう!!
人では健康のために積極的に長ネギ・玉ネギを食べている方が多いようです。
犬・猫でも健康効果があるのでは?
と思ってしまいますが、犬・猫では健康になるどころか毒になります。
ネギ属に含まれる成分の有機チオ硫酸化合物が原因と考えられています。
赤血球にはヘモグロビンというものが含まれています。
ヘモグロビンはヘム(鉄を含んだ赤い色素)とグロビン蛋白からできていて、酸素と結合することで全身に酸素を運んでいます。
有機チオ硫酸化合物は強力な酸化物質で、ヘモグロビンを酸化します。
ヘモグロビンが酸化されると、
- 酸素と結合できなくなり酸素が運べなくなる
(ヘモグロビンがメトヘモグロビンになってしまう) - ハインツ小体という物質ができ、
赤血球が弱くなることで壊れやすくなる
さらに、
赤血球膜の酸化傷害も起こすために赤血球が壊れやすくなる(エキセントロサイトを形成)。この赤血球が壊れることを溶血と言います。
壊れやすくなった赤血球は、脾臓や肝臓で排除されるようになりますが、一部は血管の中で壊れてしまいます。こうして血液中には赤血球から出てきたヘモグロビンが溢れ、腎臓から排泄されヘモグロビン尿となります。これが、
『真っ赤なおしっこが出た!!』
の正体です。
動物によって差はあるの?
猫は犬よりもヘモグロビンが酸化を受けやすくハインツ小体ができやすい。つまり、溶血しやすくなってしまいます。
猫
年齢:1歳6ヶ月
主訴:血尿、元気が無く食欲もない
診察台でも元気が無く、身体検査では粘膜が白くなっていました。
血液検査で確認すると重度の貧血となっていました。
血液を顕微鏡で観察すると、多くのハインツ小体が観察され『ハインツ小体性溶血性貧血』と診断しました。
尿を採取すると『赤ワイン色』のヘモグロビン尿でした。
飼い主様から話を聞くと、
前日に人の食事を盗み食いしてしまったとの事でした。
その料理にはネギがたくさん入っていたそうですが、かなりの量を食べてしまったとのことでした。
この猫は、輸血を行い、抗酸化治療を行うことで元気になって数日で退院しました。
まさか、ネギ入りの料理を盗み食いするとは。。。
犬の中でも、柴犬や秋田犬は赤血球内に還元型グルタチオンが多く存在していて、有機チオ硫酸化合物と反応するとより酸化作用が強くなることが分かっています。
犬・猫以外でも、牛、馬、羊、うさぎでも溶血性貧血を起こします。
どの位食べると中毒になるの?
これは個体差が大きいように思います。
玉ネギが入っているハンバーグを食べても大丈夫な犬もいれば、すき焼きの残り汁をなめてしまいネギ中毒になってしまった犬もいます。
犬では、玉ネギとして体重1kgあたり15~30g(約10kgの中型犬の場合:小玉ねぎ1個程度)
とされていますが、あくまでも目安です。柴犬・秋田犬ではさらに少ない量でもなります。
猫では、体重1kgあたり5gで中毒量と言われていますが、こちらも個体差が大きくあくまでも目安になります。
診断
犬がネギが含まれている料理を盗み食いしていた場合は、現行犯逮捕です。
ネギ属を食べた可能性があり、元気がない、食欲がない、吐く、下痢をする、呼吸が荒い、粘膜が白い、尿が赤い/茶色い(飼い主様の表現として、ワイン色だったり、コーヒー色だったりします)などが見られたら中毒の可能性が非常に高いです。
血液検査
貧血があり、高ヘモグロビン血症、高ビリルビン血症となっていることが多いです。
血液を顕微鏡で確認すると、赤血球にハインツ小体と呼ばれるものが確認できたり、変形した赤血球のエキセントロサイトが見られることがあります。
治療
解毒薬はない!!
残念ながらネギ中毒に対する特異的な解毒薬はありません。
ネギを食べてから1〜2時間以内であれば吐かせます。
これは少しでも吸収量を減らすためです。
対症療法
重度貧血の場合は輸血を行う必要があります。
呼吸が荒くなっている場合は酸素吸入を行うこともあります。
下痢や嘔吐と言った消化器症状がある場合は脱水しないように点滴治療を行ったり、制吐薬や下痢止めを使います。
その他の治療
ネギ中毒では赤血球が酸化されてしまい壊れてしまうため、この作用を少しでも軽減する目的で抗酸化剤(ビタミンCやビタミンE)を使用することもあります。
家でできること
家でできることというより注意すること・知っておくべきことです。
ネギ属って?
玉ネギ、長ネギはすぐに分かりますね。
他にもラッキョウ、アサツキ、ニンニク、ニラ、ワケギ、行者ニンニク、西洋野菜のエシャロットやリーキがネギ属に含まれます。
ニンニクは玉ネギや長ネギほど毒性はないと言われていますが、犬で中毒の報告があるため注意が必要です。
油断しないで!!
加熱してもネギ中毒は起こります。
煮汁へも毒性物質が溶出しているために中毒になります。
冬場に鍋をやったあと、ネギが入っていないからと安心していると残り汁を飲んでしまい中毒になることがあります。
カレーライス、シチュー、ハンバーグ、肉じゃが、すき焼き、メンチカツ、オニオンリング、ソースなどなど注意しなければいけないものがいっぱいです。
煮込み料理などは玉ネギの形が見えなくなって油断しがちです。
お菓子の成分表示を見ると、オニオンパウダーを使用しているものがかなり多くあります。
人間のベビーフードなどは体に良いだろうと動物にあげるとオニオンパウダーを含んでいるために中毒になる可能性があります。
すぐに病院へ
ネギを食べたのが分かったら、できるだけ早く病院へ行きましょう。
1〜2時間以内であれば吐かせることができます。
ただし、重度な病気(例えば心臓病)では吐かせることの方がリスクになることがあります。
貧血症状が出てくるのは1〜数日後の事もありますので、数日は要注意です!!
- 犬も猫も貧血を起こす
- 赤や茶色の尿が出ることがある
- 体質によって少量でも危険
- 煮汁にも毒性物質が溶け出す
- 解毒薬はないため対症療法
- とにかく食べさせない!!
水炊きの残り汁を2回なめた。
長ネギと玉ねぎがたくさん入っていたので心配。
キャンさん
それは心配ですよね。
水分だと、かなり早く腸へ流れてしまうので吐かせても効果が低いと思います。
尿の色を注意深く観察していただき、赤い尿である場合は動物病院での診察をオススメします。
さらに下痢をしてしまう場合もあるので便の様子もチェックして下さい。
1口2口であれば多くの場合、大きな問題になることはありません。
参考になれば幸いです。