甘味料である『キシリトール』。
毎日のようにガムなどのテレビCMでも耳にすることがあるのではないでしょうか?
人間にとっては健康な歯を維持するのに活躍していますが、
犬にとっては超危険です!!
今回は犬のキシリトール中毒について勉強しましょう。
キシリトールガムは1粒、1枚でも危険です。
犬のキシリトール中毒
- キシリトールって?
- キシリトール中毒の症状は?
- キシリトール中毒の治療は?
- 家でできることは?
- イチゴは食べていいの?
もくじ
キシリトールって?
キシリトールはカバノキから精製される天然甘味料として砂糖の代用品として利用されていたもので、1960年代にはキシロースから工業的に作ることができるようになりました。
現代では皆さんご存知のように歯科領域で使用されています。
人の歯とキシリトール
人に対するキシリトールの安全性
キシリトールは人の体内にも存在していて肝臓で産生されています。
FAO(国際食料農業機関)/WHO(世界保険機構)合同の規格委員会でもキシリトールは、
「1日の許容摂取量を限定せず」
という最も安全性の高い食品カテゴリーとして評価されています。
日本でも食品添加物として使用することが認可されています。
人の虫歯予防
キシリトールには人の虫歯予防効果があるとされています。
キシリトールの効果は以下の通り、
- 非発酵性(酸が産生されない)
- 唾液分泌促進
- 脱灰抑制
- 再石灰化
- ミュータンス菌の成長抑制と酸産生の抑制
- プラーク量の減少
キシリトールの代謝
人ではキシリトールはゆっくりと腸から吸収されて約80%が肝臓で代謝されています。
犬ではキシリトールは腸から素早く吸収されて、摂取後30分で血液中のキシリトール濃度がピークになります。そしてキシリトールは膵臓からのインスリン(血糖値を下げるホルモン)分泌を強烈に刺激します。この分泌刺激はグルコース(糖)の6倍とされています。そのために犬がキシリトールを摂取すると低血糖となります。
犬ではキシリトールによる肝障害が報告されています。
その機序はまだわかっていません。
中毒量
どれだけキシリトールを摂取すると中毒となるのでしょう?
人では一日で130g以上のキシリトール摂取で下痢を起こすと言われています。
犬では体重1kgあたり0.1g(0.1g/kg)の摂取で中毒が起こる可能性があります。
ただし、食事と一緒であれば体重1kgあたり1gの摂取でも症状を示さなかったとの報告もあります。
キシリトールを食べてしまった犬192例のうち20%で症状(嘔吐、昏睡、下痢、運動失調、発作など)があった。
症状があった犬のキシリトール摂取量は平均0.49g/kg(0.12〜2.13g/kg)であり、症状が無かった犬の摂取量は0.3g/kg(0.03〜3.64g/kg)であった。Retrospective evaluation of xylitol ingestion in dogs: 192 cases (2007-2012).
DuHadway MR et al.
J Vet Emerg Crit Care. 2015 Sep-Oct;25(5):646-54.
キシリトールそのもの摂取量以外にも一緒に食事をしているのか、食べてしまったキシリトールの状態がどんなものかにもよるのかもしれません。
キシリトールガム1粒で中毒!!
人ではキシリトールガムが虫歯予防に効果を発揮します。
犬の歯にも良いのでは?と思ってしまいますが、
犬には絶対にダメです。
犬では歯周病は非常に多く、3歳の犬の80%が歯周病と言われています。
しかし、
犬の虫歯は非常に少ないと言われています。
つまりそもそも犬はキシリトールガムを必要としてません。
あげても人間がガムを噛むように噛み続けることはなく、全て飲み込んでしまいます。
必要でもないし中毒になるかもしれないキシリトールガムをあげる必要はないんです!!
人用のキシリトールガム1粒中の含有量は0.5g〜1.5gです。
犬のキシリトールの中毒量が0.1g/kgですから、
5kgの犬がキシリトールガム1粒食べたら中毒量になります。
キシリトール中毒の症状
低血糖症状
犬ではキシリトールは急速に消化管から吸収され膵臓からのインスリン分泌を強烈に刺激して低血糖となります。重度の低血糖は死にいたることもあります。
低血糖の症状としては
発作、嘔吐
があります。
さらには沈うつや衰弱といった分かりにくい症状のこともあります。
犬が空腹状態でキシリトールガムを盗み食いしてしまった場合、食べてしまったガムの状態(包装紙に包まれているのか、咀嚼されたものか)や一緒に食事をしているかなどにもよりますが早ければ30分で低血糖となります。
12時間後に低血糖となったとの報告や、30時間後に低血糖になっ他との報告もあるため1〜2日の間は注意が必要です。
まれにキシリトール摂取後に高血糖が認められることがありますが、これはソモギー効果と呼ばれるもので、採決時には高血糖であってもその前には低血糖があったはずです。
低血糖と同時に血液検査では低リン血症、低カリウム血症が起こります。
肝障害
低血糖以外にもキシリトールは肝障害を起こすことがあります。
重度の場合は、肝障害から2次的な血液凝固障害のため出血傾向(血が止まりにくい)が起こることがあります。
キシリトール中毒の治療
キシリトールガムを食べてしまった場合、すぐに病院で血液検査を行いまずは
血糖値をチェック
ぐったり(衰弱)していなければ、食べたものを吐かせる処置を行います。
低血統の場合は、グルコースを含む点滴剤の静脈点滴を行います。
静脈点滴を行なっている状態でも血糖値や電解質を頻繁にチェックし、少なくとも1〜2日間は注意が必要です。
さらに肝酵素の上昇(12、24、48時間後にも評価)にも注意して治療を行います。
家でできること
キシリトールガムを犬が摂取しないように注意する!!
キッチリしまう!!!
これに尽きます。。。
キシリトールガム1粒、1枚が犬の命取りになります。
絶対に犬の手の届かない、口の届かないところにしまって下さい。
もしも食べてしまったらすぐに病院へ連れて行って下さい。
気づいた時にキシリトールガムを食べた形跡があって、
すでにフラフラしている/グッタリしている場合は、
すぐにガムシロップを飲ませる /舐めさせる
ガムシロップがなければ、砂糖水を。
練乳でもいいです。何か食べさせるのもいいかもしれません。
おそらく低血糖になっているので少しでも血糖値を上げたいところです。
できる限り早く病院へ行ってください。
いちごは食べていいの?
もともとキシリトールは天然素材で色々な食品に含まれています。
日本フィンランドむし歯研究会のホームページによると、
いちごには乾燥重量100gあたり362mg(0.362g)のキシリトールが含まれているされています。
いちごは90%が水分です。
そうすると、
いちごには湿重量100gあたり36.2mg(0.0362g)のキシリトールが含まれていることになります。
スーパーで1パック(300g)のいちごを買ってきたら、約100mg(約0.1g)のキシリトールが含まれていることになります。
犬では体重1kgあたり0.1g(0.1g/kg)の摂取で中毒が起こる可能性があります。
体重3kgのチワワさんが3パック食べるとキシリトールの中毒量。
体重10kgのビーグルさんが10パック食べるとキシリトールの中毒量。
さて食べられますか?
多分下痢します。。。笑
犬以外のキシリトール中毒
6頭の健康な猫の実験ではキシリトールの有害反応は認められなかった。
Á. Jerzsele:J Vet Pharmacol Ther. 2018 Jun;41(3):409-414
上の研究では6頭の猫にはキシリトール中毒はみられなかったと結論されています。
猫はキシリトール中毒を起こさないのかもしれません。
アメリカではフェレット、うさぎでもキシリトール中毒の報告がされています。
犬と同様に注意する必要があります。
特に若い犬は何でも口にしてしまいます。注意しましょう。
- キシリトールガムは1粒でも超危険!!
- キシリトールガムを食べてしまうと低血糖を起こす
- キシリトールガムを大量に食べてしまった場合は死にいたることもある
- いちごをあげるとしても少しにしてね(笑)