マダニは人にも犬・猫にも様々な病気を運んでくる厄介なヤツです。
マダニ?って動物病院で予防しろって言われるけど・・・。
実は知らないことが多いのでは?
近年、マダニが媒介する
『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』
という病気がニュースでも聞くようになりました。
SFTSって何?
マダニってどんな生き物?
マダニ予防薬の滴下剤・内服薬はどんな違いがあるの?
マダニの取り方
こんな内容で勉強していきます。
もくじ
マダニによる怖い病気
マダニによる被害は
- 刺咬などによる皮膚の損傷・炎症
- 多数寄生の吸血による貧血
- 唾液腺由来物質による麻痺症
- 病原体の媒介
などがあります。
直接的病害
貧血
マダニ1匹が数mlの血液を吸血するために、子犬/子猫、貧血している動物では多数のマダニが寄生することで貧血症状がでてしまいます。
皮膚の損傷・炎症
ダニは皮膚に口下片と呼ばれる部位を差し込んでガッチリとくっついて吸血します。
その部位に炎症が起こることがよくあります。
特に無理にダニを取ろうとして一部が残ってしまうと、炎症が強くなり炎症性肉芽ができてしまいます。
犬・猫のマダニ媒介性疾患
マダニを介して犬・猫に様々な病気を媒介します。
代表的なものとしては、犬のバベシア症、猫のヘモプラズマ症です。
犬のバベシア症
バベシアは赤血球に寄生する原虫です。
バベシア原虫に寄生された赤血球は脾臓などで異物として壊されます。
結果的に溶血性貧血を起こし、発熱・黄疸・貧血・食欲不振など様々な症状があらわれます。
治療が遅れると死に至る怖い病気です。
猫のヘモプラズマ症
ヘモプラズマは赤血球表面に寄生するリケッチアです。
ヘモプラズマに寄生された赤血球は脾臓などで異物として壊されます。
結果的に溶血性貧血を起こし、発熱・元気消失などの症状があらわれます。
人のマダニ媒介性疾患
次のようなものがあります。
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
- ダニ媒介性脳炎
- 日本紅斑熱
- Q熱
- ライム病
- ボレリア症
- 野兎病
などがあります。
この中でここ数年ニュースでよく聞くのは
『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』
です。
SFTS
SFTSウイルス(ブニヤウイルス科フレボウイルス属)を持っているマダニに刺咬されることで感染する病気です。致死率が10〜30%という恐ろしい病気です。
6〜14日の潜伏期のあと、
発熱、消化器症状(嘔吐、下痢など)を主張として、時に腹痛、筋肉痛、リンパ節腫脹、出血症状などを伴うこともあります。
血液検査では、白血球減少、血小板減少、肝酵素上昇などが見られます。
治療は有効な薬剤、ワクチンがないために対症療法となっています。
国立感染症研究所によると、国内で507人の患者報告(2020年4月29日現在)があり、そのうち70名の方が亡くなられています。
発生は1年中見られていますが、5月に急増し8月までがピークです。
国立感染症研究所のホームページには
『マダニ対策、今できること』
というページがあり次のようなパンプレットがあります。ぜひ読んでみて下さい。
犬・猫のSFTS
以前はSFTSは人の病気と考えられていましたが、2017年4月には猫で、2017年6月には犬での発症が確認されています。
SFTSの猫
2019年6月30日まで150頭の報告があり、致命率約60%とされています。
症状は人とほぼ同じで、元気消失、黄疸、発熱、嘔吐がみられます。
血液検査では、白血球減少、血小板減少、総ビリルビン上昇、肝酵素上昇、CK上昇がみられます。
発症猫の唾液・糞便・尿中からウイルスが排泄されているため、全ての体液に注意が必要とされています(猫から人への感染リスクがある)。
SFTSの犬
症状は人とほぼ同じで、元気消失、発熱、黄疸、消化器症状がみられます。
血液検査では、白血球減少、血小板減少、肝酵素上昇、総ビリルビン上昇がみられます。
致命率は29%とされています。
マダニはダニの仲間
ダニは昆虫(6本脚)ではなくて、どちらかと言うと蜘蛛(クモ)やサソリの仲間(8本脚)に近いとされています。
皆さんがイメージするアレルギーの原因となっているダニは『ヒョウヒダニ(チリダニ)』で大きさ0.3〜0.4mm位です。
屋内に生息し埃や皮脂、フケなどを食べて畳や絨毯などに潜んでいます。
マダニはダニの仲間で肉眼でも見える大型のダニです。
(ツツガムシもダニの仲間になります)
動物の血液を栄養源として成長し多くのマダニは『3宿主性マダニ』で、
動物へ寄生・吸血→落下し脱皮
を2度行い成ダニへと成長します。
動物への寄生する機会を待って自然環境の中で生活しています。
一生の中で吸血する期間は20〜25日ほどと言われています。
欧米ではマダニはtick、マダニ以外はmiteと区別されています。
キチマダニ、フタトゲチマダニ、オオトゲチマダニ、タカサゴキララマダニ、ヤマトマダニ、シュルツエマダニなど様々なマダニがいます。
マダニのライフサイクル
幼ダニ
卵から孵化した幼ダニの体長は約1mm。
動物に寄生して3〜7日間の吸血をして満腹になったら地面に落下します。
寄生する動物は犬猫に限らず、小型の哺乳類、爬虫類、鳥にも寄生します。
地面に落ちた幼ダニは脱皮をして若ダニへと成長します。
若ダニ
若ダニの体長は約1.6mm。
動物に寄生して3〜7日間の吸血をして満腹になったら地面に落下します。
地面に落ちた若ダニは脱皮をして成ダニへと成長します。
成ダニ
成ダニの体調は吸血前で3〜4mm。
草むらなどで生活していて、動物が近づくと二酸化炭素・熱・振動を『ハラー氏器官』で探知し、飛び移ります。
動物に取り付くと吸血場所を探し、ハサミ状の突起物で皮膚を切り“口下片”と呼ばれる部位を差し込みます。その後セメント様の物質(唾液)を流し込み皮膚と自分の口下片を密着させ、落ちないように強固にくっつき1〜2週間の間吸血をし、満腹になったら落下します。
産卵、孵化
地表に落ちたマダニは産卵を開始します。
産卵数は2000個以上に及びます!!
産卵を終えたマダニはその生涯を終えます。
卵は20〜30日で孵化して幼ダニとなります。
家でできる予防
マダニ対するできることはやはり徹底した予防です。
まずは、
草むらなどには入れない!!
先ほども言ったようにマダニは草むらなどで犬・猫が来るのを待ち構えています。
マダニがいるところに入らないのが最大の防御ですね。
ちなみに、犬の体でマダニがよく付着している場所は、鼻周り、目周り、耳です。
草ムラに顔を入れてクンクン匂いを嗅いでいる時にマダニが付着するからです。
一緒に取り組みたいのが、
滴下剤や内服薬によるマダニ予防です。
ほとんどの薬剤はノミ・マダニ予防薬としてセットになっていますね。
様々な薬剤が開発・発売されていますが、基本的には節足動物の神経系に作用する薬剤で、犬・猫・人など脊椎動物への影響はありません。
マダニのピークは2回ある!!
マダニのシーズンは、成ダニが多い春だけと思われがちですが、
秋に若ダニや幼ダニが多く発生することは意外と知られていません。
だから、年間を通じた定期的なマダニ対策が重要です。
下の図では6月頃と秋の9.10月頃にピークがあるのが分かります。
滴下剤
滴下剤は、犬猫が舐めることのできない場所(多くは背中の肩甲骨の間)に垂らすものです。
滴下剤にも体表分布型と体内吸収型があります。
ここでは体表分布型の話をします。
滴下剤を垂らすと、犬猫の体表の皮脂を伝わり全身に薬剤が広がり、皮脂腺に蓄えられるようになっています。
皮脂腺に蓄積された薬剤が少しずつ体表に放出されることで効果が持続するようになっています。
吸血防止効果があるかも
皮脂に含まれた薬剤のバリアにノミ・マダニが接触することで駆除できるという効果が期待できます。
ノミであれば急速に殺滅することができ、あくまでも可能性ですが吸血する前に駆除できる可能性があります(マダニの方が強いので時間がかかります)。
体表の皮脂に依存しているために、薬物濃度に濃淡ができてしまいます。
そのため、薬剤に接触しないノミ・マダニには効果が出ません。
シャンプー直後の場合は、被毛は乾いているけど実はまだ皮膚表面が濡れているということがあります。そこに滴下剤(薬剤:フィプロニル)を垂らすと薬剤が結晶化して析出してしまい効果がなくなってしまうことがあります。さらにシャンプーによって皮脂が減ってしまっていると、薬剤が全身に分布できなくなってしまう可能性があります。
滴下剤の場合は、皮膚の弱い犬・猫では溶媒による皮膚炎が起こることがあります。
メチャクチャ苦かったのを覚えてます。
動物でも舐めてしまうと、苦さのために一過性にヨダレが出ることがあります。
内服薬
内服後に血液中に薬剤が吸収され、有効血中濃度が保たれている限り効果が持続します。
内服後、比較的スムーズに吸収されるので早い駆除効果が期待できます。
安定した駆除効果
ノミ・マダニが吸血を行えば薬剤も吸血することになるため、安定した殺滅効果が期待できます。
内服薬だと、おやつ代わりになったり滴下剤と違ってシャンプーも気にしなくてオッケーです。
また、滴下剤であると乾くまで待つ必要がありますが内服薬では気にせずスキンシップがとれます。
ただし、必ず吸血されるというのがデメリットになります。
特にノミアレルギー性皮膚炎のある犬・猫では、すでにノミの唾液に対する感作が起こっているために、少しでもノミの唾液が体内に入ることで強い痒みが生じてしまいます。
マダニを取る必殺技
まず、知っておいてほしいこととして、
マダニが媒介する病原体が体内に入り始める危険性が高いのは
吸血開始から48時間以降です。
内服系のマダニ予防薬は内服後に素早く吸収され、マダニの駆除効果も早くから出るので
まずは内服をさせるというのが1つの手段になります。
吸血したマダニは薬の作用で殺滅され自然に落ちます。
2つ目の手段としては、
直接マダニを取ることです。
ただし、絶対にやってはいけないNGとして
マダニを指でつまんで引っ張ることです。指でなくてもお腹をつまむことがNGです。
マダニの中の病原体をお腹を押して注入することになり、さらには無理に引っ張ることで顎が皮膚に残ってしまい、炎症を起こしてしまいます。
マダニを取る取るときは、
ピンセットなどで顎の部分(顎の基部)をつまんでゆっくり引き抜いて下さい。
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マダニを取った後に皮膚炎になることも多く、
動物病院で診察してもらって、マダニの除去・皮膚炎への対応をしてもらうのが一番良いですね。
マダニと一緒にノミの勉強もしましょう。
- マダニは犬・猫に様々な病気を運んでくる
- マダニは人・猫・犬にSFTSを媒介する
- 滴下剤・内服薬の特徴を知っておく
- マダニを指で引っ張って取ってはいけない