実は犬の皮膚は非常にデリケート。
毛でおおわれていますが、皮膚は人よりも薄いし、脂質などを多く含んだベタつきのある汗をかくので皮脂汚れが多いです。
普段からスキンケアとしてのシャンプーが必要です。
皮膚のトラブルも多く、近年では犬の皮膚トラブルに対しての治療としてのシャンプーに注目されています。
今回は、
シャンプーの回数は?
シャンプー剤はどれを使う?
オススメのシャンプーの仕方
などを勉強します。
もくじ
シャンプーって必要?
動物病院では『痒い』『下痢をした』『吐いた』とい主訴で来院される患者さんを診ない日は無いと言えます。
『アニコム家庭どうぶつ白書2018』(アニコムホールディングス株式会社調べ)によると、犬の保険請求割合で最も多いのは24.9%で皮膚疾患、ついで消化器疾患23.5%、耳の疾患16.0%となっています。
もっとも多い『皮膚疾患』ですが、その中でも多いのはアレルギー性皮膚炎(アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)、(表在性)膿皮症、マラセチア性皮膚炎などです。
これらの病気は良くなったり、悪くなったりを繰り返していることが多く、長く付き合っていく病気と考えていいと思います。治療としては内服薬や外用薬が中心となります。
ここで重要になるのが
シャンプー療法
です。適切なシャンプーを行うことで、薬に頼らなくても維持できるようになったり、薬を減らすことができるようになります。
また、若い時からシャンプーの習慣をつけておくことで、良好な皮膚コンディションを保つことができ、『皮膚疾患』にならずに過ごせます。
現在の犬の皮膚の状況にもよりますが、
健康な皮膚の状態を保つためには2週間に1回のシャンプー
をすることがオススメです。
アトピー性皮膚炎の犬では週に1回のシャンプーが推奨されています。
犬の皮膚構造
犬の皮膚では人といくつかの点で違いがみられます。
1.表皮が薄い
皮膚は表面から表皮(角質層、顆粒層、有棘層、基底層)、真皮、皮下組織となっていますが、人と犬では表皮の部分の厚みが違います。
人では約0.2mm(細胞が10〜15層)なのに対し、
犬では約0.05mm(細胞が2〜3層)と非常に薄くなっています。
表皮では基底層で角質細胞が生成されて上へ上へと押し上げられます。角質層へと押し上げられた角質細胞が古くなると『フケ』として剥がれ落ちます。基底層で生成され角質細胞が剥がれ落ちるまでを皮膚のターンオーバーと呼びます。
皮膚のターンオーバーは人では約45日ですが、犬では約21日と早くなっています。
2.犬は1つの毛穴からたくさんの毛がはえている
3.犬はベタつきのある汗をかく
人ではエクリン腺が全身に分布していて汗をかきます。
犬ではアポクリン腺が全身に分布していて、脂質などを多く含んだベタつきのある汗をかきます。
シャンプー剤は何を使う?
シャンプー剤にも様々な種類があります。
犬ではやはり獣医師に相談して現在の皮膚の状態にあったシャンプーを選んでもらうことをオススメします
動物病院ではこれらのシャンプーを複数使って洗うことが多いです。
例えば、脂漏症でマラセチア性皮膚炎の犬では抗脂漏シャンプーを使いベタつきを取ってから抗菌系のシャンプーをして最後に保湿剤を使います。
アトピー性皮膚炎の犬で膿皮症を伴っている場合は、抗菌系のシャンプーをした後に止痒系シャンプーをします。
獣医師に現在の皮膚状態を診察してもらい、
シャンプー剤を選んでもらいましょう。
止痒シャンプー
アトピー性皮膚炎など痒みのある際には『止痒シャンプー』がオススメです。
炎症・痒みを緩和してくれる作用があります。
成分としてはオートミールやアロエベラなどがあります。
動物病院で良く使用されるのが、
エピスース、オーツシャンプーエクストラ、アロビーンシャンプーなどです。
抗菌シャンプー
殺菌・静菌目的に使用するシャンプーで表在性膿皮症やマラセチア性皮膚炎などには『止痒シャンプー』がオススメです。
膿皮症では多くの場合ブドウ球菌という細菌が原因となり皮膚炎を起こしています。その際にクロルヘキシジンが含有されているシャンプーで殺菌・静菌します。
マラセチアは皮脂などを好む酵母様真菌(カビ)です。常に犬の皮膚に存在する菌(常在菌)ですが、これが過剰に増殖して皮膚炎を起こすことがあります。これにはミコナゾール(抗真菌剤)や2%以上のクロルヘキシジンを含んだシャンプーが有効です。
成分としてはグルコン酸クロルヘキシジン、硝酸ミコナゾール、ピロクトンオラミン、ヒノキチオールなどがあります。
動物病院で良く使用されるのが、
ノルバサンシャンプー、クロルヘキシジンシャンプー、マラセブ、デュクソラールシャンプー、メディダームなどです。
抗脂漏・角質溶解シャンプー
脱脂作用・角質溶解作用・皮膚の軟化作用があり、脂漏症のようなベタつきの多い犬やフケの多い犬には『抗脂漏・角質溶解シャンプー』がオススメです。
サリチル酸は角質溶解作用が期待できるためフケの目立つ犬にオススメです。
乳酸エチル・過酸化ベンゾイルは脱脂作用が強いので脂漏症にオススメです。
成分としてはサリチル酸、乳酸エチル、過酸化ベンゾイルなどがあります。
動物病院で良く使用されるのは、
ケラトラックス、動物用サルファ・サリチル酸シャンプー、セボゾールシャンプー、エチダン、ソルブルサルファシャンプーなどです。
保湿系シャンプー
乾燥しているドライスキンの状態には『保湿系シャンプー』がオススメです。
アトピー性皮膚炎ではドライスキンの状態になっていることが多く、角質状態の改善に保湿を行うことで症状の緩和が期待できます。
成分としてはセラミド関連物質、リピジュア、ヒアルロン酸、コレーゲン、アミノ酸などです。
動物病院でよく使用するのが、
アフロートベット低刺激シャンプー、ヒノケア、アデルミル、デュクソシャンプー、アロマベッツトリートメントモイスト泡シャンプーなどです。
シャンプーの準備
準備するもの
- ブラシ
- ベビーバス
- 滑り止めマット
- シャンプー
- シャンプーを泡立てるもの
(スポンジ、泡立て器、泡立てネット、ペットボトルなど) - 洗面器・桶
- 保湿剤
- タオル
- ドライヤー
ベビーバスは底に栓がついているものの方が使いやすいです。
滑り止めの代わりにタオルを敷いておくのもいいかもしれません。
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ブラッシング
シャンプーの下準備としてまずはブラッシングをします。
ブラッシングをすることで、シャンプー前に抜け毛を回収したり、汚れを取ったり、毛玉を改善しておきます。そうすることでシャンプーが馴染みやすくなります。
スリッカーブラシなどで無理にブラッシングをすると皮膚を傷つけることになります。
無理なく行いましょう。
体全体をぬるま湯で濡らす
お湯は35℃前後が目安ですが、
皮膚の痒みがある犬では30℃位(温水プール位)の低めにします。
皮膚の温度が急激に上昇すると痒みを生じるからです。
急にシャワーを当てるとビックリしてしまうので、まずは足を濡らしてシャワーヘッドを体に接着させながらお尻からすすぐように濡らしていきます。
どうしても嫌がる犬では、体に直接お湯を当てるのではなくベビーバスの壁にシャワーを当てて、徐々に水位を上げていって体をお湯につける(入浴する)ようにします。
シャンプーを泡立てる
犬にシャンプー剤をつける前に、前もって泡立てておくようにします。
スポンジ、泡立てネットなどを使って洗面器などにシャンプー泡を準備します。
脂漏症や部分的にベタつきが多い場合は、クレンジングオイルを塗布してからシャンプーをしたり、過酸化ベンゾイルシャンプーの使用がオススメです。
これらを使用すると脱脂作用が強いのでシャンプー後に保湿を行うようにしましょう。
シャンプー泡でマッサージ
たっぷり泡ができたら犬の体に泡を乗せていき、体を泡で包みます。
ゴシゴシ洗い
⇩
泡で全身マッサージ
一昔前はシャンプーと言ったら全身ゴシゴシ洗っていましたが、
それでは皮膚を痛めてしまうため、現在の考え方ではシャンプー泡でのマッサージが基本です。
泡を乗せたら全身をマッサージするように体をなでていきます。
尻尾、お尻、足、お腹と下から頭に向かって行うことで、嫌がる顔にシャンプーが付いている時間が短くできます。
泡を乗せて全身マッサージを5〜10分は行うようにします。
お風呂が苦手な犬ではなかなかジッとできません。
そんな時は、皮膚トラブルがある場所を最初にやって嫌がったらそこで終了とします。
指の間や肉球の間は皮膚炎になっていることが多いです。しっかり洗いましょう。
顔まわり、特に目頭に目やにが付いていたり、口周りにヨダレや食べカスで固まっている場合はお湯でふやかしてからつまんでで取り除いたり、ノミ取りコームを使ってとります。無理に引っ張らないようにしてください。
シャワーで流す
全身の泡を流していきます。
顔を嫌がる場合は、シャワーを当てるのではなく、手に乗せたお湯をかけたりスポンジや小さなタオルにお湯を含ませてそれを絞るようにします。
頭から首、背中と上から下に向かっていくように流していきます。
おとなしい犬では保湿剤が入った入浴を行うのもオススメです。
保湿剤
アトピー性皮膚炎などではドライスキンになっているためにしっかりとした保湿が必要です。
シャンプーをしっかりと洗い流した後に保湿剤を使用します。
かけ流すタイプやスプレータイプ、スポットオンタイプなど様々なものがあります。
シャンプー同様、保湿剤に関しても獣医師に何を使ったらいいか相談してみましょう。
近年、保湿の重要性が分かってきています。次のような人の報告があります。
赤ちゃんの全身に1日1回以上、保湿剤を塗るスキンケアを生後1週間以内に開始し32週まで続けたところ、アトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下した。
Journal of Allergy & Clinical Immunology(11.248)Vol.134,Issue 4,October 2014
離乳食が始まる前に適切な保湿ケアを行うことで肌のバリア機能を保ち、食物アレルゲンによる”経皮感作”を起こす可能性が減る可能性があり食物アレルギーの発症リスクも低減できるかもしれません。
タオルドライ・ドライヤー
タオルで水分を取るようにします。マイクロファイバーバスタオルなどを使用すると効率的です。
ドライヤーを使用する場合は温風と冷風を切り替えながら、皮膚の温度が上がらないように注意します。
皮膚の温度が急激に上昇すると痒み・乾燥・皮膚炎が生じることがあります。
ドライヤーの音が嫌いな犬ではスヌードを被せてあげることで、大人しくなる子もいます。
ただし、
嫌がる犬を無理に乾かそうとしてタオルで強くこすったり、ドライヤーの温風を当て続けることで皮膚の状態は悪化します。
嫌がるなら生乾きの状態でもオッケーです。
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Q&A
心臓病の犬はどうしたらいいですか?
シャンプーに慣れていれば問題ありません。
もともとシャンプーに慣れている犬で軽度の心臓病であればそれほど心配ありませんが、シャンプーが嫌いであったり、心臓病が進行している場合は担当獣医師に相談してみてください。
ブラッシングをこまめにやってあげたり、蒸しタオルで体を拭いてあげたりすることでシャンプーの間隔をあけることができますが、皮脂汚れなどはなかなか取れません。
ドライシャンプーも一案です。
慣れているトリミングサロンで、心臓病がある胸を伝えて手短に行ってもらえればそれがいいかもしれません。
高齢の犬でもシャンプーすることが負担になりますので、やはり動物病院で相談するのがいいでしょう。
腰や足に問題のある犬のシャンプーは?
滑らないようにすることが一番大事です。
滑り止めを使いシャンプーをするようにしましょう。
滑り止めが無い場合はタオルを敷いてその上でシャンプーをしてください。
立てない犬では伏せた状態で顎の下に丸めたバスタオルを入れて顔をあげるようにして行うようにします。2人でシャンプーができる場合は、1人が体を支えてもう1人が手早くシャンプーをしてあげられます。
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マダニ・ノミ予防の滴下剤はどうしたらいいですか?
滴下剤の多くは体表の皮脂を伝わって全身に広がっていきます。そして、毛穴にある皮脂腺に蓄積されることでその後皮脂とともに分泌されて長時間の効果を発揮します。
2〜4週間に1度のシャンプーであれば影響が無いとされていますが、アトピー性皮膚炎では1週間に1度のシャンプーをすることが推奨されていて、薬の効果が薄れる可能性があります。
また、抗脂漏シャンプーなどを使用すると皮脂が減少するために薬剤が全身に分布できなくなります。また、マイクロバブルをする場合は毛穴の洗浄効果もありこれも薬剤の効果が落ちる可能性があります。
このような場合は内服薬でのマダニ・ノミ予防をオススメします。
滴下剤を使用する際は、シャンプー後にしっかりと皮膚が乾いている必要があります。
皮膚に水分が残っていると、薬剤が水分に付くことで結晶化して効果が無くなります。
また、滴下剤の多くは皮脂によって薬剤が全身に広がるので、皮脂が減っているのでシャンプー当日ではなく、翌日以降がオススメです。
- 健康な皮膚を維持するために
2週間に1回のシャンプーがオススメ - 獣医師にシャンプーの種類を選んでもらう
- お湯は35℃が目安
- 痒みのある場合は30℃くらい
- シャンプー=泡でのマッサージ
- 嫌がるのであれば生乾きもオッケー