犬の病気

口が臭い 犬の歯周病

帰宅した際に、留守番していた犬がシッポを振りながら顔をペロペロ舐める。

口が臭い‼︎

以前と比べると口が臭うようになった。と感じている飼い主様もいるのではないでしょうか?

多くの犬の口臭の原因は歯周病です。
人の歯科の2大疾患と言えば『虫歯』と『歯周病』ですが、

犬は虫歯になりにくく、歯周病になりやすい!!

今回は犬の歯周病の勉強です。
犬の歯の特徴、虫歯は少なく歯周病は多い理由。
歯周病になるとどんな影響があるの?
歯周病の予防法は?
などを一緒に勉強しましょう。

Rin先生
Rin先生
歯周病の勉強を始めましょう。

もくじ

犬の歯の特徴

歯の本数は?

動物によって歯の数には違いがあります。
人では親知らずを含めると32本。
猫やライオンなどの猫科では30本。
象は牙が2本に臼歯が4本の計6本。臼歯はすり減ると脱落して新しい臼歯に置きかわります。
うさぎは28本で伸び続けるという特徴があります。切歯(前歯)は1年に約10cmも伸びます。

犬の歯は42本です。

犬に虫歯ができにくい理由

人と犬の口の中の比較です。

虫歯は酸によって歯が溶けてしまう病気です。
虫歯のでき方を簡単に言うと、

  1. 食べかす(デンプン)がアミラーゼという消化酵素に分解されて糖に変わる
  2. 虫歯菌は糖を分解して酸を作る
  3. 酸がエナメル質を溶かす(虫歯)

犬は唾液中にアミラーゼという消化酵素が無いために、口の中でデンプンを糖に分解できません。
もともと唾液が弱アルカリ性であるために、酸でエナメル質が溶けることがありません。
これが犬が虫歯になりにくい理由です。

お兄さん
お兄さん
でも、虫歯ができたって犬がいるみたいですけど。

Rin先生
Rin先生
そうですね。ときどき虫歯になっている犬をみます。
飼い主様から話を聞くと甘いものをあげることがあるみたいでした。。。
糖があれば菌によって酸が作られ、エナメル質が溶けて虫歯になります。

歯周病ってなに?

虫歯は、そのものが壊される病気です。

一方で、
歯周病は、歯の土台が壊される病気です。
歯ぐき(歯肉)や骨(歯槽骨)などが壊されてしまい、歯の土台が壊されてしまうために歯がグラグラと揺れるようになって最終的には歯が抜けてしまいます。

3歳の犬の80%以上が歯周病!!

30代以上の3人に2人が歯周病

  【平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)】

人では歯周病が非常に多く、歯を失う原因の1位が歯周病です。

犬では以前より3歳の犬の80%以上が歯周病と言われていましたが、
AAHAのDental Guidlinesにはホームデンタルケアを行わない小型犬では、9ヶ月齢から歯周病が始まるとことがあると記載されています。
2017年には体重5kg以下の1歳以下の犬の90%が歯周病だったという報告もあります。

お兄さん
お兄さん
そんなに多いんですか!?

Rin先生
Rin先生
ビックリする数字ですよね。でも、小型犬の3歳は人の年齢にして30歳前後になるので人間のデータと似たような数字かもしれません。

犬の年齢と病気皆さん1度は考えたことがあると思います。 『うちの子、人の年齢だと何歳になるんだろう?』 16歳で人の年齢80歳、13歳で人の年齢80歳...

歯周病は、
歯と歯ぐきの間(見えない場所)でどんどん進行します!!

歯の表面を触るとネバネバ・ヌメヌメしていることがありますが、これはプラーク(歯垢)と呼ばれるものです。
プラーク(歯垢)は細菌とその産生物で、歯に強固に付着しています。
特に歯と歯ぐきの隙間には多く存在していて、歯ぐきに炎症を起こします。
歯ぐきの炎症が続くと、歯と歯ぐきの隙間はますます深く広がり、
プラークがさらに増殖して歯の周り(歯周組織)を破壊していきます。

プラークが石灰化したものを歯石と呼びます。
歯石はプラークがより付着しやすく、プラークの増加因子となります。
犬では口の中が弱アルカリ性になっていて、プラーク(歯垢)が歯石になりやすい環境になっています。
プラークが歯石になるまでの日数は、人では約20日なのに対して、犬では3〜5日です!!

犬は歯磨きの習慣が無く、プラーク(歯垢)がそのまま放置されているため歯周病が多くなります。
プラーク(歯垢)から歯石になるまでの時間も短く、さらにプラーク(歯垢)が増えやすくなるために歯周病が進行しやすいとも言えます。

Rin先生
Rin先生
オオカミなどの野生動物では、獲物を捉えて食べる時に
毛を噛み、皮膚を噛み、肉を噛み、骨を噛み。物理的に歯が擦れる事で歯磨き効果があります。

歯周病の問題とは?

歯周病の最大の問題は歯が無くなってしまうことです。

人では歯周病が原因で次のようなことが起こります。

  1. 心臓病(感染性心内膜炎、狭心症、心筋梗塞)
  2. 動脈硬化
  3. インスリン抵抗性による糖尿病の悪化
  4. 低体重児出産、早産
  5. 気管支炎、肺炎

犬でも同様のことが起こると思います。
さらに、
歯周病菌や炎症性物質が全身へ影響することで様々な臓器や免疫機能への影響もおこっていると思います。

他にもよくみる病気として、
『口鼻ろう』があります。これは上顎の歯周病、とくに犬歯の歯周病が進行した場合に上顎骨が破壊されて、ろう菅により鼻腔に排膿するようになったものです。クシャミを主訴に来院される事が多いです。

目の下が急に腫れたり、膿が出てきたとの主訴で来院された場合には『外歯ろう』が考えられます。
これも歯周病により上顎骨が破壊されてしまった結果の病気です。

『下顎骨骨折』も時々みられます。骨折までしなくても歯周病の進行により皮質骨がわずかに残っているだけの犬もいます。何かの拍子に顎を打ってしまうとすぐに骨折してしまいます。

歯周病の症状

歯周病の症状としてもっとも多いのが、

口が臭い!!

ということです。毎日の生活で気付きやすい症状だと思います。
他にもクシャミや顔の腫れなどもあります。これらは『口鼻ろう』や『歯ろう』によるものです。
歯がグラグラしていると痛みが生じるために、口を気にしたりヨダレが出たり、場合によっては出血をしている事もあります。

歯周病の診断

問診

どの病気でもそうですが、飼い主様から様々な情報を聞く必要があります。
どのような症状(先ほどの表にあるような)があるのか。
食欲はもちろん食べ方や食べるスピードも聞きます。
普段口にしているオモチャの形状や材質、自宅での歯磨きに関しても聞きます。

視診・触診・臭診

口周りだけでなく、前足や胸などの毛の状態や皮膚病がないかをチェックする事で、普段ヨダレが多いのか出血したりする事があるのかを予測できます。
口の臭いはどうか。
プラーク(歯垢)や歯石がどの程度付着しているのか(プラーク指数、歯石指数)。
歯ぐきの炎症がどの程度なのか(歯肉指数)。
歯が揺れるかどうか。
などを調べます。

ただし、犬の場合はこのような検査でも嫌がるために、できない事も多々あります。

口腔内の精査をする場合は麻酔が必要になります。
特に歯周病は見た目がキレイな歯であっても、歯と歯ぐきの間で進行しているために麻酔をかけた精査が必要になります。

麻酔をかけての検査:プロービング、レントゲン

歯と歯ぐきの歯周ポケットがどの程度の深さがあるかをチェックします。
さらに歯がどの程度グラグラするかもチェックします。
レントゲ検査では、歯根の状態や歯槽骨の状態が分かります。

Rin先生
Rin先生
定期的に全身麻酔下での歯科検診が理想です。

歯周病の治療=プラークコントロール

歯周病は放置しておくとどんどん進行します。
ごく軽度の歯肉炎の状態であればホームケアで改善しますが、歯周病が進行すると健康な状態には戻らなくなります。

多くの犬では歯周病になってしまっている事から、動物病院での治療が必要になります。
歯周病の治療は
単に見えている歯石を取る事ではありません。

歯周組織の状態を確認し、
見えている歯石やプラーク(歯垢)を取り除き、
歯周ポケットの歯石やプラーク(歯垢)も取り除き、
病的なセメント質や象牙質を取り除き、歯根面をツルツルにして、
歯周ポケット内の炎症性肉芽を取り除き、
場合によっては抜歯を行い、
研磨するのが歯周病治療です。

お兄さん
お兄さん
大変そうですね。

Rin先生
Rin先生
こうならないように予防が大事なんです!!

お兄さん
お兄さん
麻酔をかけずに歯石を取るだけじゃダメなんですね。

Rin先生
Rin先生
無麻酔での歯石取り。。。最近良く耳にしますね。

無麻酔での歯石取りはオススメしません。

無麻酔での歯石とりのメリットとしては、
麻酔をかけない。
見た目がキレイになる。
臭いが減る。
ってところでしょうか。

デメリットとしては、
犬を無理やり押さえつけて怖い思いをさせる(その後、口を触らせなくなる)。
歯の表面を傷つけるので処置後に歯垢・歯石がつきやすくなる。
歯と歯の隙間、奥歯や歯の内側は無処置(プラークが大量に残っている)。
歯石取りの器具は刃物であるために、犬が怪我をする事がある。

家でできる事

歯周病は予防が大事です。
できる限り早いうちから、家での歯磨き習慣をつけましょう。

お兄さん
お兄さん
すでに大人になってしまってる場合は遅いんですかね。

Rin先生
Rin先生
過去は過去。
今日が一番若いんです。
今日からスタートが一番早いんですよ。

ただし、
すでに歯周病になっている場合は、歯磨きで痛みが出てしまうのでまずは病院で歯科検診を受けてからがいいでしょう。

ステップ1。口を触れるようになる

頭を撫でる際に、マズルや口も一緒に触ってみて下さい。
もしも、嫌がるようならまずはこれが目標です。
オヤツを見せて、
マズルや口を触らせてくれたら小さなオヤツをあげて褒めてあげましょう。
毎日繰り返す事で触らせてくれるようになります。

次に、そっと唇の中に指を入れて歯を触ってみて下さい。
触らせてくれたらオヤツをあげて褒めてあげましょう。

それもできたらその指を動かして、歯(と歯ぐき)をこすってみて下さい。
いきなり奥歯を触ろうとすると嫌がるかもしれません。
焦らず少しずつでいいです。
もちろんこすらせてくれたら、褒めてあげましょう。

唇をめくりあげられるようになるとさらにいいですね。

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ステップ2。ガーゼを使ってみる

ガーゼを水で濡らして(場合によっては好きなものの臭いをつけて)指に巻きます。
ステップ1をクリアできていれば、口を触る・歯を触る事ができるようになっていますから、今度はガーゼを巻いた指で触り、こするようにします。
できたら褒めることを忘れずに。

これも時間をかけて焦らず慣れさせましょう。
毎日の繰り返しが大事です。

もしも、ガーゼを巻いた指で慣れてきたら、そこに歯磨きペーストを塗ってやってみましょう。

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ステップ3。歯磨きをする

綿棒を濡らして歯をこすってみる。
さらに、歯磨きペーストをつけてこすってみる。

やるときは褒めてあげたり、ご褒美を忘れずに。

ここまできたら次は歯ブラシに挑戦です。
歯ブラシを嫌がる場合は、歯磨きペーストをつけて舐めさせたりして歯ブラシに慣らすようにしましょう。
歯ブラシに慣れたらこすってみて下さい。
歯ブラシはこまめにゆすぎながら使いましょう。

100点・完璧じゃなくてもいいです。
少しでもできればそれだけプラークが減りますから!!
ゆっくり焦らず歯磨きできるようになりましょう。

補助的ケア

デンタルガムなどを利用するのも家でのケアの補助になります。
噛むことでプラーク(歯垢)が軽減できます。
ガムを使用する際は、人がガムを持って犬に噛ませるようにすると、一気に食べてしまうのが防げてよりゆっくり噛んでくれます。

デンタルガムは子供用のハサミで切れるくらいの硬さが良いと言われています。
ひづめや骨などの硬いものでは歯が割れてしまう事があります。

Rin先生
Rin先生
どうでしたか?少しでも歯周病の事がわかりましたか?
皆さん、歯を大切に。

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キシリトールガムは絶対にダメ!!

歯をキレイに!!
それならキシリトールガムでしょ。
と思った方もいるかもしれませんが、

キシリトールガムがは犬には毒です!!
絶対にやめて下さい。

キシリトールガムを食べてしまった!! 犬のキシリトール中毒甘味料である『キシリトール』。毎日のようにガムなどのテレビCMでも耳にすることがあるのではないでしょうか?人間にとっては健康な歯を維持す...
まとめ
  • 犬は虫歯より歯周病が多い
  • 歯垢から歯石には数日で変化する
  • 見えないところ(歯と歯ぐきの間)で歯周病が進行する
  • 歯周病は全身に影響する
  • 歯周病の治療はプラークコントロール
  • 家での歯磨き習慣が最高の歯周病予防
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POSTED COMMENT

  1. 犬変態 より:

    うちの仔は5歳で、歯がもう全部ないのですが、それでもお口が臭いです
    それは何が原因なのか教えて下さい
    また記事にしていただけると参考になります

    • tachyzoite より:

      コメントありがとうございます。
      犬歯も含めて全ての歯が無いということでしょうか?歯ぐきの状態は何か言われていますか?
      歯周病原細菌のPorphyromonas gulaeとい菌の中でタイプCと呼ばれるものは歯周炎の発症 ・ 増悪に関係していて悪性度が高いことが知られています。
      この菌がいると若いうちに重度の歯周病となって歯を失うことになります。

      食べカスなどが口の中に残ってしまう理由があるとそれを細菌が分解して口臭が出ます。
      口腔内の状態をしっかり見る必要があるかもしれません。
      口腔内善玉菌のサプリメントで口腔内環境を改善するのも解決策の1つかもしれません。
      さらに、食事の種類によっても口臭が変わります。消化が口臭にも関係しているからです。

      Rin

  2. ママっこ より:

    高齢犬(17歳)で麻酔ができないため膿が出て治るを繰り返しています。
    抗生剤の注射と頬の傷に塗り薬、という処置です。
    こうならないために最後の思い切ったケアとして
    全身麻酔での歯周ポケットの掃除をして3年たったころから
    こうなりました。
    先生に質問があります。お忙しいところ恐縮ですが
    人間用のうがい薬を薄めて歯をふいてやってもいいでしょうか?歯周ポケットの掃除歯石除去を行ったときは
    歯は1本も抜かなくてよい状態でしたのに、
    ケアが悪かったのだと後悔しております。
    個人さまのブログで知っているワンちゃんの画像が使用されているようで、思い切ってのご相談です。

    • tachyzoite より:

      ママっこさん

      コメントありがとうございます。
      17歳のワンコなんですね。立派です!!

      目の下(頬のところ)から排膿しているということですね。
      そうであれば『外歯瘻』の可能性が高いです。

      歯茎には炎症はありませんか?
      うがい薬での消毒は問題ありません。他にもクロルヘキシジンなどの消毒もいいと思います。
      ただし、
      もしも炎症があるのであれば、こすることで出血したり痛みが出ますので無理はしないようにお願いします。

      病院での対応として、
      例えば排膿しているものを細菌培養検査をしてどんな抗生物質が効くのかをチェックしてもらうこともできるかもしれません。
      問題になっている歯がグラグラしている場合は、麻酔リスクがあるのであれば診察室で抜いてしまうこともできるかもしれません。
      さらには歯周ポケットへ抗生物質の軟膏を詰め込むというのもできるかもしれません。

      麻酔をかけられない場合でも何かできることがあるかもしれませんので、かかりつけの動物病院で相談することをお勧めします。

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