咳が出始めると止まらずに寝られなくなる。
大好きな散歩の時にも咳が出ると止まらない。。。
ツライですね。
今回はそんな咳を起こす病気『気管虚脱』について勉強しましょう。
もくじ
症状
![](https://oshieterinsensei.com/wp-content/uploads/2019/09/8c5e362bf4ad1d3a5047b7d4b04e8c8b_s.jpg)
気管虚脱は気管が虚脱(扁平化)する病気です。
いまだにその原因は不明です。
症状としては、軽い咳から
喉に何かが引っかかったような咳
咳が止まらなくなり
『ガァーガァー』と
ガチョウが鳴くような咳(Honking cough)
をしている犬まで進行・重症度によって症状も様々です。
咳のせいで起きてしまいグッスリ寝られないという犬もいます。
更にひどい場合には呼吸困難となりチアノーゼ(舌などが真っ青になる)の状態になります。
咳のメカニズムと原因
咳は気管・気管支、咽頭・喉頭、胸膜、心膜、横隔膜などに存在する受容体が刺激を受け、延髄の咳中枢へ伝えることで誘発されます。
咳の刺激には
1.機械的刺激
2.化学的刺激
3.炎症性刺激
4.温度刺激
などがありますが、特に機械的刺激が重要です。
犬の場合の機械的刺激としは、
散歩の際に首輪を使用している事が多くその首輪による刺激
地面に近い事で埃や異物を吸い込んでしまうことでの刺激
心臓病のために心拡大をおこし、心臓拍動の気管支への刺激
気管虚脱、気管支虚脱による咳が気管を潰す刺激
などにより咳が起こり、それが刺激となってさらに咳がでるといった咳の連鎖により咳が止まらなくなってしまいます。
好発犬種
中高齢の小型犬に多く、特にポメラニアン、ヨークシャー・テリア、チワワ、プードル、マルチーズに多いとされていますが、柴犬やゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーでもみられるため、どの犬種でも注意が必要です。
![](https://oshieterinsensei.com/wp-content/uploads/2019/09/スクリーンショット-2019-09-06-15.17.56-1024x576.png)
診断
問診、身体検査
散歩は以前と同じように行けているか?
夜はぐっすり眠れているか?
いつ咳をしているか(散歩中、寝ている時、食事中など)?
などが獣医師から聞かれるポイントです。
散歩の時や自宅で咳き込むことがあればそれを携帯電話のビデオで撮影しておいて診察の際に見せてください。
触診では頭から尻尾までの全身をチェックします。
口の中のチェックでは舌の色/口腔粘膜の色や毛細血管再充満時間をみて貧血がないか、肺でガス交換(酸素が取り込めているのか)ができているか、循環状態が良好か確認します。
首の触診では気管を触って咳が出ないかチェックします。
聴診では心臓の音をチェックして心疾患がないかを確認します。小型犬で心雑音が大きい場合は心臓の弁膜症のために心拡大をおこしていて、それが咳の1つの要因になっているかもしれません。
呼吸音のチェックも重要で、異常音が聴こえていれば肺炎や肺水腫、肺線維症などが疑わしくなり、呼吸音が聴こえなかったり聴こえにくい場合は胸水や気胸などが疑われます。
正常ではないことが分かればレントゲン検査が必要になります。
レントゲン検査
画像診断としてはレントゲン検査が重要です。
息を吸った時(吸気)と息を吐いた時(呼気)のタイミングを変えて撮影することで気管や気管支の変化を確認することができます。
肺炎や胸水、気胸などもレントゲンで確認できます。
心臓病が重度であれば心拡大がみられ気管を持ち上げているようにみえるかもしれません。
![](https://oshieterinsensei.com/wp-content/uploads/2019/09/スクリーンショット-2019-09-06-15.18.05-1024x576.png)
レントゲン透視検査
透視検査を行うことで呼吸の際の気管の変化をリアルタイムで確認できます。特に撮影中に咳をした場合ははっきりと虚脱を確認できます。
超音波検査
呼吸器疾患で超音波検査を行うこともありますが、ほとんどが緊急時の場合です。
心臓の雑音がある場合は超音波検査も一緒に行います。
気管支鏡検査
実施できる施設は少なく麻酔も必要になります。
気管支鏡検査をすることで病変を目視することができ、検査に必要なサンプルを採取することもできます。採取されたサンプルから細胞検査や培養検査を行います。
直接気管の中をみてみると正常であれば気管は丸く見えます。気管虚脱をおこしている場合は様々な程度で潰れていることが確認できます。
![](https://oshieterinsensei.com/wp-content/uploads/2019/09/スクリーンショット-2019-09-06-15.18.59-1024x576.png)
血液検査
細菌感染などによる肺炎や慢性炎症であれば白血球数や炎症マーカーに異常が認められます。
動脈血液ガス分析を行うことで実際に肺でガス交換ができているかが判断できます。
![](https://oshieterinsensei.com/wp-content/uploads/2019/09/3b9aa9de746388ccd818d00f24e09008_l-1-1024x683.jpg)
治療
外科治療
・気管内ステント
実施できる施設が少ないのが現状です。
重症例や急性悪化の呼吸困難時に有用とされています。
処置時間も短時間で終了します。
しかし、問題点もあります。
気管内に異物を入れることで刺激になる可能性や異物反応で肉芽が形成されること、
ステントが動いてしまう可能性や破損の可能性です。
さらにステント自体が高額であることです。
・気管外プロテーゼ
実施できる施設が少ないのが現状です。
内科治療
気管虚脱や気管支虚脱では物理的に気管や気管支が潰れて虚脱してしまうため内科治療では完治は望めません。
しかし!!
気管・気管支虚脱が完治できなくても咳を軽減することは可能です!!!
原因のところでも説明したように、
気管・気管支虚脱では様々な原因で咳をします。
心拡大が原因の一つであれば心臓の治療を強化することで咳が軽減できます。
炎症が刺激になっているのであれば抗炎症剤を使用することで咳を軽減できます。
鎮咳剤の中には直接的に咳中枢を抑制するものもあります。
咳が続くことで痰が分泌されそれが刺激になることもあるため去痰剤を使用することもあります。
鎮咳薬
気管支拡張薬
去痰薬
抗菌薬
グルこコルチコイド薬
その他
これらの薬を組み合わせたり、ネブライザーと言われる霧の治療を組み合わせたりすることで咳の軽減を目標に治療を行います。
家でできること
ダイエット
![](https://oshieterinsensei.com/wp-content/uploads/2019/09/pet_fat_dog.png)
もしも重度の肥満であればダイエットも1つの治療オプションです。
太っていることで首(頚部)の気管が圧迫されて咳が出やすくなっている可能性があり、
ダイエットで刺激を減らす
ことができるためです。
ダイエットでは総カロリーを減らすようにしますが、十分なタンパク質を取る事を心がけましょう。
ハーネス
![](https://oshieterinsensei.com/wp-content/uploads/2019/09/4eb94a683992e24628fd243cbe50d77c_s.jpg)
首輪で散歩していてグイグイと引っ張ると気管を刺激して咳が出ます。
できれば
胴輪タイプのものに変更
しましょう。
生活環境
温度や湿度の変化にも過敏になっていることがあります。特に真冬や真夏など室内と室外での温度差が激しい時期は気をつけましょう。
食器や水飲みで頭を下げることが刺激になるようであれば台をつけて器を高くしてあげて下さい。
冷たい水を飲むことが刺激となって咳をする犬もいます。
興奮がきっかけになって咳をしてしまう場合はできる限り興奮しないようにしましょう。
煙なども咳の原因になります。咳がひどい場合は煙やアロマ、スプレー剤の使用も注意して下さい。
埃なども刺激になります。
・喉に何か詰まったような咳、ガチョウが鳴いているような咳は気管虚脱の可能性がある
・ダイエットや胴輪への変更で気管の刺激を減らす
・家の中の生活環境の工夫をすることでも咳を減らせる