犬が頭を振っていたり、耳を床にこすりつけていたりするのは耳が痒いせいかもしれません。
耳のニオイが臭ければ外耳炎の可能性が高いです。
今回は外耳炎・家でできることについて勉強しましょう。
もくじ
症状
- 耳を痒がる
- 耳が赤くなり、耳垢が多い
- 頭を振る
- 耳を床にこすりつける
- 耳がクサい
- 耳だれがある
- 耳を触ろうとすると怒る
このような症状はないでしょうか?
『耳の痒み』は病院の診察ではもっとも多い主訴の1つです。
耳を痒がる、耳が臭いというのが病院に行く理由で多いですが、中には外耳炎が酷くなり痛みを伴うために触ろうとすると怒る犬もいます。
人とは違う構造
人と犬では耳に大きな構造の違いがあります。
それは耳道と呼ばれる構造です。
人では耳の入り口から鼓膜までが直線的な道になっているのに対し、犬では直角に曲がる道となっています。また、この耳道の距離も人では約3cmなのに対し犬では5〜10cmと長く、犬種によっては多くの毛が密生しているために常に湿った環境になり、外耳炎になりやすいといわれています。
外耳炎の3つの原因
外耳炎になりやすい犬ではその原因は大きく分けて3つあります。
外耳炎の土台となる好発因子、外耳炎の引き金・直接的な原因となる原発因子、外耳炎を後押しさせる慢性化因子の3つがあります。
好発因子
外耳炎の土台になる好発因子としてはまずは先ほど言った犬の耳の構造です。人の直線的な耳道と違い、垂直耳道+水平耳道の曲がりくねった耳道が大きな外耳炎の土台となっています。
その他に
- 耳道が狭い
- 耳道内に生えている毛
- 垂れ耳
- アポクリン腺(脂をだす分泌腺)の過剰分泌
と言った先天的な因子であったり、
- シャンプー
- 水泳
- 湿度・温度
- 耳のケアの仕方
などの環境要因であったり、
基礎疾患などが外耳炎の土台となる因子です。
原発因子
土台があっても必ずしも外耳炎が起こるわけではありません。
土台に炎症を起こすキッカケがあって外耳炎となります。
外耳炎の引き金・直接的な原因となる原発因子としては、感染、異物、腫瘍、基礎疾患があります。
感染症としては、耳ダニ(ミミヒゼンダニ)や毛包虫(ニキビダニ)の感染があります。
外耳炎を起こす異物(耳の中に入ってしまったもの)としては、植物や毛、土、砂などがありますが、外耳炎治療のために入れた薬物も可能性としてあります。
一番多い原因となるのは基礎疾患になりますが、その中でもほとんどがアレルギー疾患が原因です。
アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、接触性アレルギーなどが外耳炎の原因の大部分を占めていると思います。
アトピー性皮膚炎?と思われるかもしれませんが、耳の中も体表面を覆う皮膚の一部ということを考えると外耳炎の原因となることも納得です。アトピー性皮膚炎の犬の50〜80%は外耳炎があると言われています。
慢性化因子
外耳炎の土台があり、アレルギーなどで外耳炎が起こった際に炎症の後押し、火に油を注ぐような因子がこの慢性化因子です。
慢性化因子としては、細菌感染、酵母感染(マラセチア感染)、炎症により起こった変化があります。
炎症で起こった変化というのは、外耳炎が原因で耳道が腫れて狭くなったり、アポクリン腺が過形成を起こしたり、中耳炎(外耳炎のせいで起こった中耳炎がさらに外耳炎を悪化させる)が起こったりというものです。
好発犬種
好発犬種としてはアメリカン・コッカー・スパニエルやジャーマンシェパードと言われています。
テリア系やプードルのように耳道に毛が多い犬種や、ゴールデン・レトリバーのように耳の垂れた犬種では通気性が悪かったり、柴犬やフレンチ・ブルドッグのようなアトピー性皮膚炎の多い犬種でも外耳炎が非常に多いです。
診断
犬が耳を痒がったり、頭を振っているという症状があり、身体検査で耳(外耳道)に炎症があれば『外耳炎』という診断になります。
しかし
診断が目的ではなく、治療して症状が改善することが目的なので、なんで外耳炎になったのかという原因(好発因子、原発因子、慢性化因子)を知ることが大事になります。
問診・身体検査
・いつからどんな症状がありますか?
・どちらの耳ですか?両方ですか?
・今までもありましたか?
・あった場合には治療しましたか?治療せずによくなりましたか?
・シャンプーや耳掃除はどのようにやっていますか?
・食事は何を食べていますか?おやつはあげていますか?
などが獣医師から聞かれるポイントです。
身体検査では、全身を細かくチェックして外耳炎以外の疾患が隠れていないかを確認します。
特に皮膚炎の状態でアレルギー症状がないか、角化異常(フケが多い)や脂漏症(アブラが多い)がないかをチェックします。
耳鏡検査
耳鏡という道具を使い、耳道内の状態を見ます。炎症や潰瘍がないか。狭くなっていたり腫瘤がないかを確認し、鼓膜の状態もチェックします。
耳垢検査
耳垢検査では、耳ダニ(ミミヒゼンダニ)や毛包虫、細菌や酵母(マラセチア)、白血球、腫瘍細胞の確認をします。細菌感染がある場合はさらに細菌培養検査を行います。
治療
どんな原因で外耳炎になっているかで治療は変わりますが、まずは耳の洗浄です。
耳洗浄
外耳炎の多くは多量の耳垢がたまっていることから、洗浄することで耳垢を除去して耳道や鼓膜への刺激を減らし、細菌やマラセチアが増えにくい環境を整えます。
点耳薬
外耳炎の原因により、細菌感染に対しては抗生物質、酵母(マラセチア)に対しては抗真菌薬、また炎症がある場合は抗炎症薬を点耳する必要があります。
特に細菌感染の場合は耐性菌の存在に注意が必要で、しっかりと培養検査を行い感受性のある抗生物質をしないといけません。
内服薬
耳洗浄や点耳薬を行っても良くならない場合は内服薬が必要な場合もあります。
慢性的外耳炎や炎症のために痛みが強い場合はステロイドの内服が必要なこともあります。
さらに慢性化して耳道がほとんど狭窄してしまっていて、外耳炎を繰り返している場合は外科的な処置を考えないといけません。
基礎疾患の治療
外耳炎の多くがアレルギー性の疾患と関連しているために、一時的に外耳炎が良くなってもアレルギー疾患に対応しておかないと再発することがほとんどです。
家でできること
家でのケアで大事なことはやはり
耳洗浄をすること
綿棒での掃除はNG
お風呂上がりに綿棒で耳を拭くと気持ちいい!!
そうですよね。確かに気持ちいい。
ただし、それは人のこと。
犬の耳のケアで綿棒の使用はNGです!!
犬の耳の構造などを考えると綿棒での掃除は汚れを奥に押し込むことになってしまいます。
さらに綿棒でこすることで耳道の炎症が起こり、外耳炎が起こりやすくなります。そのため綿棒の使用はやめてください。
犬の耳掃除をマスター
用意するのは耳洗浄液
①(垂れ耳の犬では)片手で耳を引き上げ、
洗浄液をたっぷり入れる
洗浄液は耳から溢れてきてもok
②もう片方の手で
耳の根元をよ〜くマッサージ
マッサージすることで耳道の壁についた汚れが浮くようにします
③犬に頭を振ってもらう
普通は人が手を離すと犬が勝手に頭を振ります
✳︎周りに洗浄液と耳垢、汚れが飛び散ります
✳︎マッサージの後に少しコットンなどで水分を取ってから頭を振ってもらうといいかもしれません
④耳の周りの水分、汚れを軽〜く拭いて終了
汚れが強い場合はこれを2〜3回
この耳掃除を週に1回はするようにしましょう。
獣医師から点耳薬を処方されている場合は、この耳洗浄をして耳垢を除去してから点耳を行った方が効果的です。
耳に直接洗浄液を入れるのを嫌がる犬もいます。
そんな時はコットンに洗浄液を染み込ませて耳の入口に置きそれごとマッサージをすることで洗浄できます。
- 人と犬では耳道の構造が違う
- 外耳炎では3つの原因がある
- 家での耳掃除をマスターする