何度もトイレに行ってオシッコをする。
出たと思ってもほんのちょっとだけ。。。
戻ってきても落ち着かずにまたトイレに向かう。
見ているだけでも辛そうです。
猫は泌尿器の病気が非常に多いです。
特に多いのは腎臓病、膀胱炎、尿路結石です。
今回は猫の膀胱炎について勉強していきましょう。
膀胱炎について一緒に勉強していきましょう。
もくじ
膀胱炎の症状
頻尿・血尿がポイント
膀胱炎とは文字通り『膀胱の炎症』の事ですが、炎症が起きている事でいつも膀胱が刺激されている状態になるので、常に尿意を感じます。
尿をした後でも膀胱刺激が続いているので残尿感があります。
スッキリしないですよね。
さらに炎症のためにそこから出血して赤色の尿、つまり“血尿“ということになります。
炎症が強い場合は痛みも伴います。特に排尿する際は膀胱が収縮するので痛みが強くなるようです。
- 頻尿(何度もトイレに行く)
- 不適切な場所での排尿(トイレまで我慢できない)
- 排尿痛
- 血尿(薄ピンクだったり赤かったり)
膀胱炎の原因は何?
皆さんが『膀胱炎』と聞いて一番に想像する原因は“細菌”ではないでしょうか?
人や犬では細菌性膀胱炎はもっとも一般的な膀胱炎だと言えます。
でも猫だと細菌性膀胱炎の発生はそれほど多くありません。
猫の尿路では細菌感染が起きにくい防御機構があります。
細菌は尿道の粘膜にあるヒダに捕捉され、排尿時の強い圧力で洗い流されます。もしも膀胱内にたどり着いても膀胱粘膜表層にあるグリコサミノグリカン層で細菌が繁殖しにくくなっています。
さらに、
猫は濃縮された尿を作るために、尿には尿素や有機酸が高濃度に含まれていて浸透圧も高いために細菌が生育できません。
10歳以下の猫の膀胱炎の原因として最も多いのは
特発性膀胱炎
です。下部尿路疾患のうちこの特発性膀胱炎が約60%とされています。
それに対して感染症は約10%となっています。
下部尿路疾患(FLUTD:feline lower urinary tract disease)
排尿困難、疼痛性排尿、頻尿、血尿、不適切な場所での排尿を起こす疾患の総称。
疾患として尿路感染症、尿石症、先天性尿路障害、腫瘍、特発性膀胱炎などが含まれる。
以前、『猫の慢性腎臓病』で勉強しましたが腎臓病では尿を濃縮することができなくなります。つまり薄い尿になるために細菌は増殖しやすい環境になります。さらに腎臓病の猫は高齢なことが多く抵抗力も落ちています。
若い猫と比べると高齢猫では細菌性膀胱炎の発生が多くなり、
10歳以上の猫では、下部尿路疾患のうち50%以上が
尿路感染症
となっています。
やはり高齢になると腎機能が落ちるために感染が起きやすくなるということです。
他にも結石による膀胱炎や、腫瘍による膀胱炎などが原因として考えられます。
特発性膀胱炎
特発性膀胱炎(FIC:feline idiopathic cystitis)は、人の間質性膀胱炎と類似していると言われていて原因は完全には解明されていない病気です。
人間の間質性膀胱炎も原因不明の疾患です。
膀胱に炎症が起きることで尿が近い、膀胱や尿道に違和感や痛みが起こります。病気のタイプからハンナ型と非ハンナ型に分かれます。ハンナ型では、膀胱の内視鏡でハンナ病変と呼ばれる特有の異常がみられます。このハンナ型は難病指定されています。
分かっていることは、非常に複雑なメカニズムによって発症する多因子性疾患であるということです。特発性膀胱炎の一部の猫では膀胱粘膜の異常が確認されていたり、神経・内分泌に異常が確認されていたり、ストレスが原因であるとの報告もあります。
- 肥満
- 飲水量が少ない
- 運動不足
- 猫の頭数に合わないトイレの数
- 同居の猫より臆病、神経質
- 引っ越しが多い など
ストレスに関連したイベントの後に症状が悪化している猫が多く、どうやら猫の特発性膀胱炎は
ストレスが大きく関わっている
ようです。
診断
細菌性膀胱炎では、膀胱内の細菌の存在を証明すれば診断できます。
特発性膀胱炎では、特異的な検査が無く除外診断となります。
問診 ←一番大事なポイントです。
頻尿、血尿、排尿痛(尿をしている時に鳴く)などの症状があるかを確認します。場合によっては、不適切な場所での排尿が唯一の症状の事もあります。
さらに、生活環境についても詳しく聞きます。
- 同居猫(動物)はいる/いたか、仲は良いか
- 引っ越しをしたか
- 家族構成は、患者猫が好きな人はいるか、嫌いな人はいるか
- 家に誰か来ることがあるか
- 近所の騒音はどうか
- トイレの数、位置、掃除の頻度は
- 家具の移動はしたか
- 旅行などに行ったか
- 食事の変更などがあったか
- 最近病気をしたか などなど
もっともっと聞きたいことはあります。
猫のストレスになりそうな事は非常に重要なポイントです。
身体検査
膀胱炎以外の疾患がある場合も、それが猫にとってのストレスとなって特発性膀胱炎を起こす事もあります。そのために詳細な身体検査が必要です。
尿検査・細菌培養検査
尿検査では尿の比重(尿の濃縮状態を確認できる)や潜血(見た目には分からない血液成分の確認できる)、細菌や結晶など多くの事が確認できます。
細菌性膀胱炎を除外するためには、できれば膀胱穿刺による無菌的採尿を行い細菌培養検査を行う必要があります。細菌の種類が分かるだけでなく、何の抗生物質が効くかも分かります。
画像診断(レントゲン検査・超音波検査)
膀胱結石、腎結石など結石の存在が確認できるだけでなく、その他の異常を確認できます。
血液検査
基礎疾患の有無を確認する事ができます。
治療
細菌性膀胱炎であれば、抗生物質治療をする事になります。
特発性膀胱炎の場合は、もともと原因不明の病気のために治療も非常に難しいと考えられています。
『特発性膀胱炎の猫では治療の有無に関係なく、5〜7日間以内に症状が解消するが、約50%の猫では症状の再発がある。』との報告があります。さらに、この再発を繰り返し起こします。
再発を繰り返すことから、特発性膀胱炎の治療は長期間にわたる可能性が高いと言えます。
オス猫に特発性膀胱炎が発症した場合は尿道閉塞に特に注意が必要です。
これは膀胱炎のために炎症物質が多量に生産され、それらの物質が尿道に栓をしてしまうからです。
メス猫と比べるとオス猫は尿道が細くなる部位があり、そこで尿道閉塞になる事があります。
内科治療
特発性膀胱炎と診断できた場合の治療の第一選択は、
- 環境改善によるストレス管理
- 水分補給
- 疼痛管理
ストレス管理、水分補給に関しては次の『家でできること』で説明します。
先ほど言ったように特発性膀胱炎では排尿痛があるとされています。疼痛はさらに炎症を悪化させる事が知られているために、疼痛管理も重要になります。この疼痛管理には非ステロイド剤などが使われます。
第一選択の治療を行っても症状が緩和されず持続してしまう場合や再発を繰り返す場合には第二選択治療を追加します。
- 抗不安薬
- 抗痙攣薬 など
抗不安薬としてはいくつかの抗うつ剤を使用します。さらにはサプリメントを使用して不安を和らげる事もあります。
強い炎症のために尿道の筋肉が強く収縮してしまい、機能的尿道閉塞を起こしている状態では抗痙攣薬を使用します。
家でできること
特発性膀胱炎の場合、家でできることが非常に重要になります。
それはストレスを減らすことと水を飲ませる工夫です。
環境改善によるストレス管理
安心できる環境
家の中でも大好きな場所・安心できる場所を作ってあげてください。
いくつも作ってもらって構いません。
猫は柔らかくて暖かいところが好きです。ふかふかベッドを用意してあげましょう。
隠れ家を作ってあげるとさらにいいと思います。
窓の外を眺めるのが好きな猫もいます。窓辺にもベッドを用意してあげるようにしましょう。
ただし、外に野良猫などが来て緊張してしまう猫や不安になる場合は目隠しを作ってあげるようにした方が良いです。
多頭飼育の場合
仲が良いのであれば問題ありませんが、気まずい中であればベッドの数を増やしたり、棚の上など高い場所にも休めるところを作るのがオススメです。高い場所で周りの状況を見渡して他の猫との距離感を保って安心する猫もいるからです。
ホントは飼い主と遊んで欲しかったり、かまってほしいけど気の弱い猫は他の猫に遠慮してしまいます。少しの時間でもいいので『特別時間』を作ってあげる事をオススメします。他の猫とは別の部屋に行き、1対1の特別時間『マイタイム』。笑
トイレは数カ所
人間でもトイレに入っている時に次の人が待っているとゆっくりできません(笑)
のんびりと排泄できる環境を作りましょう。
トイレの大きさとしてはできれば猫の体の1.5倍くらいの大きさが良いでしょう。
複数の猫がいるご家庭では
トイレは頭数+1の数が必要です。
さらにトイレは並べるのではなく、できるかぎり見えないように離して置くと良いでしょう。
フード(囲い)がついたトイレに変更するのも他の猫に邪魔せれず、人に注目されることもなく一人で安心して排泄ができます。ただし、狭いトイレでフードがついていると匂いがこもってしまうので注意が必要です。
トイレはいつも清潔にしましょう。
トイレ砂も好みがあるようです。
お気に入りのトイレを作ってあげて下さい。
水を飲んでもらう工夫
特に寒くなる冬場には要注意です!!
冬場になるともともと水を飲まない猫がもっと飲まなくなります。
また、完全にドライフード派の猫も水分が不足しがちになります。注意しましょう。
・水はいつも新鮮なものに
少なくとも1日2回は交換しましょう。
埃や毛が浮いている水より新鮮で綺麗な水を好む猫が多いです。
・水飲み場を工夫する
理想は数カ所の水飲み場を作ってあげることです。
いつでも水を飲めるようにしてあげましょう。
トイレの近くや騒がしいところは避けて下さい。
風呂場や洗面台の水が好きな猫もいます。
タイル床にある水が好きだったり、流れている水が好きだったり。
蛇口から流れくるの水をペロペロとなめる姿をよくみます。蛇口からポタポタ水を垂らしておくのも良いでしょう。
好きな場所を探してみて下さい。
・器にこだわる
小さすぎる器はお勧めできません。
ステンレス製、プラスチック製、ガラス性、陶器製など様々な材質がありますが、
一番のオススメは陶器製
です。陶器の器に変更しただけで水をよく飲むようになった猫が多いです。
水がまろやかになるのでしょうか?はっきりしたことは分かりませんが。。。
深い器よりもフラットなものが良いです。
できればヒゲがあたらない器が良いでしょう。
・好きな水を探す
水といっても水道水、ミネラルウォーター、水素水など様々です。
どんな水が好きかみつけて下さい。
ササミや魚の煮汁を使ってみて風味をつけるのも良いでしょう。(水が傷みやすくなるので注意が必要です)
・水の温度を考える
ぬるま湯の方が好きな猫が多いです。
逆に氷が好きな猫もいます。場合によっては味(風味)付の氷を作ってあげるのも良いでしょう。
・食事に水をたす
ウエットフードに少し水を足したり、ドライフードをお湯やササミの煮汁でふやかしたりすることで少し水分補給ができます。
- 10歳以上の猫では細菌性膀胱炎の可能性が高い
- 特発性膀胱炎では治療は長期化する事を覚悟する
- 特発性膀胱炎にはストレスが大きく関与している
- ふかふかベッドを何ヶ所か用意する
- トイレはいつも清潔にする
- いつでもお水を飲めるようにする
- 特に冬場に要注意