犬・猫の病気

皮膚にしこり・できものができた⁉︎

自宅でくつろいで犬・猫を撫でていたら・・・

アレッ!?こんな所にしこりあったっけ?

そんな経験がある方もいるかもしれません。
動物病院での診察でも
『しこり・できものがある』
という主訴で来院されるケースは非常に多く、毎日のように診察しています。

動物病院ではどんなことするの?
家ではどうしたらいいの?

こんな疑問に答えられたらと思います。

Rin先生
Rin先生
今回は皮膚のしこり・できものの勉強です。
では、勉強を始めましょう。

もくじ

“しこり”ではない、ヤツら!!

Rin先生、急にしこりができたみたいなんですけど・・・泣

毛をかき分けて、

Rin先生
Rin先生
こっ、コレは!!

・・・マダニです。

吸血前のマダニは2〜3mmの大きさですが、たっぷり犬の血液を吸うと10〜20mmもの大きさになるために、犬をなでている時に
アレッ?しこりがある!!
と感じることがありあます。特に犬では全身毛でおおわれているために毛をかき分けないとマダニが見えないことがあるのでしこりと勘違いしてしまいます。

犬の体でマダニがよく付着している場所は、周り、周り、です。
草ムラに顔を入れてクンクン匂いを嗅いでいる時にマダニが付着するからです。

マダニは草ムラなどで動物が通るのを待ち構えていて、動物がきた場合に飛びつきます。
飛びついたマダニは吸血部位を探し、その場所で皮膚を切り“口下片”と呼ばれる部位を差し込みます。
マダニの唾液中にはセメント様物質が含まれていて、それを流し込むことで皮膚と口下片をしっかりと密着させます。

お兄さん
お兄さん
だからひっばっても取れないんですね!!

Rin先生
Rin先生
マダニを掴んで無理に引っ張るのはやめましょう。動物病院で取ってもらうのがいいです。

マダニが寄生していた部位はマダニ除去後も炎症を起こして硬結してしまうことがあります。

マダニによる感染症として犬猫では、犬バベシア症、猫ヘモプラズマ症、ライム病、エールリヒア症、Q熱などが知られています。

さらに、
人獣共通感染症として日本でもマダニが媒介する次のような人の病気があります。

  • 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
  • 日本紅斑熱
  • ライム病
  • ダニ媒介性脳炎

『しこり・できもの』の勉強なのに、いきなり“しこりではないマダニ”が出てきましたが、実は診察の際にすごく多いんです。

ダニ予防をしっかりするようにしましょう。

【油断禁物】皮膚にマダニがくっついた!! マダニが運ぶこわ〜い病気とマダニのとり方マダニは人にも犬・猫にも様々な病気を運んでくる厄介なヤツです。 マダニ?って動物病院で予防しろって言われるけど・・・。実は知らないことが...

そもそも“しこり”って何?

“しこり・できもの”は筋肉や皮下組織などの一部分が固くなること。また、そうなったもの。と辞書には記載されています。

お兄さん
お兄さん
ある日、今まで無かった塊に気づいたら不安でいっぱいになりますよね。

Rin先生
Rin先生
では、その今まで無かった塊=しこり・できものとは何なんでしょう?

皮膚科では色や大きさなどで呼び名をつけています。

  • 班 :色調の変化した触知できない平坦な病変
  • 丘疹:直径1cm以下の限局性隆起性病変
  • 局面:直径1cm以上の平坦な隆起性病変
  • 膿疱:表皮内、皮下、毛包に位置する膿を含む皮膚の限局性隆起
  • 水泡:直径1cm以上の透明な液体で満たされた天蓋に皮膜を有する境界明瞭な表皮の隆起性病変
  • 膨疹:皮膚の限局性浮腫による境界明瞭な隆起病変(通常数分〜24時間以内に消失する)
  • 結節:直径1cm以上の通常皮膚深層にまで広がる固形隆起性病変
  • 囊腫:上皮に内張りされた液体または固形物を含む腔

これはあくまでも皮膚の状態を表現するための名前で診断名ではありません。
他の様々な情報を組み合わせて次に行う検査・治療を検討するためのものです。

例えば『膿疱』が見つかった場合に、
全身の皮膚に痒み赤みがあり表皮内に多数の『膿疱』があった場合は『膿皮症』が強く疑われることから、シャンプー療法などの外用療法や抗生物質などの全身療法と言った試験的治療が行われます。そのような治療を行ってもよくならない場合は、膿疱から材料を採取し細菌培養検査を行ったり、膿皮症を悪化させるような基礎疾患がないかを精査する必要が出てきます。

『丘疹』の場合、
広範囲多数赤みを帯びた『丘疹』が見られ場合、アレルギー反応や細菌感染、免疫介在性疾患、薬物反応などを考える必要があります。

Rin先生
Rin先生
飼い主様によっては『できもの』と言われることもありますが、『ボツボツができた』と表現されていることが多いように思います。

では、
1つだけ丘疹や結節が見つかった場合はどうでしょう?

診察にいらした患者様が、コレは『ガン』ですか?と質問する一番多いパターンです。

Rin先生
Rin先生
やはりここでも、他の様々な情報と組あせて考えていきます。

見た目だけでは分からない!!

先生、皮膚に柔らかいピンクのできものができてるんですけど、良性のできものですかね?ネットに書いてありました。

インターネットでは『良性・悪性腫瘍の見分け方』のようなものがあって、白やピンクであれば良性腫瘍、黒っぽければ悪性腫瘍と記載されていることがあるようです。

見た目では分からない!!
触り心地でも分からない!!

どんなベテランの獣医師でも、腫瘍の専門医でも見た目、触り心地では確定はできません。
もちろん、内心『アレかな?』と考えていることはありますが。

次の皮膚のしこりを見て、どれが悪性か分かりますか?

答えは⓶です。
他のシコリは良性腫瘍でした。

さらに、次の指にできたシコリはどうでしょう?

⓶が悪性腫瘍です 。
⓵は炎症(細菌感染)、⓷は良性腫瘍です。

お兄さん
お兄さん
ホントに見た目だと分かりませんね!!

シコリを見つけた場合に考えれるのは次の3つです。

  • 炎症(感染症、異物、非感染性疾患など)
  • 腫瘍(良性腫瘍、悪性腫瘍など)
  • その他

見た目で判断するのではなく、
病院で診察してもらいましょう。

病院での診察

問診

先程、皮膚の状態・シコリの状態と他の様々な情報を組み合わせて次に行う検査を考えると言いました。飼い主様からの情報も非常に重要になります。

  • いつ見つけました?
  • 見つけた時の大きさはどの位でしたか?
  • 今日まで大きくなってきていますか?
  • 大きくなるスピードは急ですか?
  • 他の場所にもありましたか?
  • 色は何色でしたか?
  • 毛は抜けてましたか?
  • 本人はその場所を気にしていますか?
  • しこりを触った後、周りが赤くなったり、腫れたりしませんか?

などなどを問診します。
もしも、すでに他の病院で診察してもらったことがある場合は、どんな治療(塗り薬や内服薬)をしたかを教えていただけると診断の参考になります。

特に『いつ見つけましたか?』の項目は重要です。
急激に大きくなるシコリは悪性腫瘍の可能性があるからです。

細胞診検査・針生検(fine needle biopsy:FNB)

採血の際に使用するような細い針を使って、シコリから細胞を採取して顕微鏡で観察するのが細胞診検査です。

この検査はおおよその判断をするものです。
炎症なのかな?
炎症だとしたら、どんなタイプの炎症なのかな?
腫瘍なのかな?
腫瘍だとしたら、良性?悪性?

というように考えます。

肥満細胞腫、悪性黒色腫、皮膚組織球腫など一部の腫瘍では細胞診で診断ができます。

この細胞診検査で判断がつかないような場合には、組織生検(コア生検、パンチバイオプシー、切除生検)を行う必要があります。

炎症

炎症と言ってっも様々なタイプの炎症があります。
例えば細菌感染による炎症だったり、自己免疫性の炎症だったりです。

脂肪織炎

犬の無菌性結節性脂肪織炎は、何らかの理由で皮下脂肪が炎症を起こしてしまうものです。
ハッキリとした原因は不明ですが、免疫介在性で炎症が起こるとされています。

ミニチュア・ダックスフンドに多く見られる傾向がありますが、どの犬種でも起こります。
シコリが複数できたり、発熱などの全身症状を伴うこともあります。

膿瘍

猫ではケンカの後に皮下に膿瘍をつくることがあります。
皮膚に爪が刺さったり、噛まれたことで細菌感染をして腫れてしまいます。

腫瘍

腫瘍は、

本来自己の体内に存在する細胞が
自律的に無意味にかつ過剰に増殖する状態

と定義されます。
例えば、皮膚は表皮の一番奥にある基底層から新しい皮膚細胞が作られています。
それが上へ上へと押し上げられて、肌の表面に出てきます。やがて、その細胞が垢や古い角質として剥がれ落ちるというサイクルができています。そうやって、皮膚が皮膚として保たれているわけですが、これが勝手に(自律的に)ガンガン細胞を作ることで、細胞が古くなる前にどんどん細胞ができてしまい(過剰に増殖)剥がれ落ちることもできず、本来の皮膚構造ではなくなるわけです。これが腫瘍ということです。

腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、
悪性腫瘍が皆さんが思っている“ガン”のことです。
どんな細胞が腫瘍化したのかによって、〜癌、〜腺癌、悪性〜と言った呼び名がかわります。

毎日のようにしこり・できものの診察をしていますが、腫瘍の中で一番多いのは良性腫瘍の“脂肪腫”です。
下に犬・猫の病理組織検査会社がまとめた皮膚・皮下腫瘍の発生率を示しましたが、
脂肪腫は細胞診検査で診断ができ、良性であることから組織検査まで行わないことが多く、発生率が低く見積もられています。

脂肪腫

脂肪細胞の良性腫瘍です。脂肪細胞が異常に増殖してしこりをつくったものです。
良性ですが、腫瘍なので大きくなっていくことがあります。
触ると柔らかいですが、筋肉と筋肉の間などにできると硬く触れることもあります。

皮脂腺腫・皮脂腺上皮腫・皮脂腺過形成

毛包に付属する皮脂腺の良性腫瘍です。
高齢の犬に多く見られ、多発することもあります。

皮膚組織球腫

若い犬で多く、急激に大きくなり毛が無くて赤いものが多いです。
基本的には良性で、無治療で2〜3ヶ月で自然治癒します。

肥満細胞腫

統計的に犬・猫ともに皮膚腫瘍の中でもっとも多いのがこの『肥満細胞腫』で、皮膚ガンの1つです。
太っていることを表す『肥満』と同じ漢字ですが、関係ありません。
アレルギー反応に関与する肥満細胞(mast cell)が腫瘍化したものです。

見た目や触り心地で騙されやすい腫瘍No.1です。
ホントに分かりません。

境界がハッキリとした硬いこともあれば、境界不明瞭な柔らかいこともある。
1個のことも多発することもある。
白かったり、ピンクだったり、出血していたり。
成長がゆっくりだったり、急激に大きくなったり。
日によって大きさが変化したり。

どの皮膚腫瘍にも似ている、まさに『曲者(くせもの)』です。

Rin先生
Rin先生
細胞診検査で診断することができます。以前、十数ケ所に柔らかい腫瘤がある犬を診察した際に、細胞診検査をしました。順番に検査をしていくと、脂肪腫、脂肪腫、脂肪腫・・・。
最後の最後で『肥満細胞腫‼️』でビックリしたことがありました。

お兄さん
お兄さん
細胞診検査をしないと分からないんですね。

その他

表皮嚢胞

表皮嚢腫、粉瘤(アテローム)と呼ばれたりもします。
毛包の毛漏斗部の皮膚がめくり返って、皮膚の下に袋ができてしまいます。嚢胞壁は表皮と同じ構造であるため、中に角質や皮脂が溜まり大きくなっていきます。
時としてここに細菌感染を起こして炎症を起こし急激に大きくなることがあります。
場合によって、その袋が破裂して中から黄色っぽいドロッとした物質が出てくることがあります。

家でできること

家でできることは1つ。

毎日スキンシップをとる

ことです。スキンシップをとることで、早く犬・猫の皮膚のしこりに気づくことができます。
気づいたらできる限り早く動物病院に行き診察を受けましょう。

炎症でも、腫瘍でも、

早期発見/早期治療です‼︎

まとめ
  • しこりと思っていたらマダニ寄生なんてことも
  • しこりは見た目だけでは分からない
  • しこりでは炎症・腫瘍・その他の3つを考える
  • いつ見つけたかが重要
  • 毎日のスキンシップで早期発見/早期治療
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