猫の病気

おしっこが多い/水をよく飲む 猫の慢性腎臓病  治療編

おしっこが多い、水をよく飲むというのは猫の慢性腎臓病のサインです。
前の記事で症状と診断について勉強しました。今回は治療と家でできることについてです。

Rin先生
Rin先生
猫の慢性腎臓病。自宅でどんなケアができるか一緒に勉強しましょう。

前の記事で猫の慢性腎臓病では国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)によるステージングがあるということを話しました。そこでは血液検査のクレアチニンの数値によってステージが決められていました。IRISはこのステージングから治療の推奨もしています。

治療

残念ながら腎臓病は治る病気ではありません。
そのため治療目標としては、

進行を遅らせ、生活の質を上げる

ということになります。

IRISによる治療推奨

Stage1の治療
 ・原因疾患の検出と治療
 ・腎毒性薬剤の中止または慎重投与
 ・腎前性・腎後性の異常を是正
 ・脱水の補正
 ・リンを4.6 mg/dL以下に維持
 ・タンパク尿がある場合は食事療法および投薬
 ・高血圧がある場合は高血圧の治療

Stage2の治療
 ・Stage1の治療に加えて
  ・腎臓療法食
  ・低カリウム血症の治療
  ・代謝性アシドーシスの治療

Stage3の治療
 ・Stage2の治療に加えて
  ・リンを5.0 mg/dL以下に維持
  ・PCVが20%以下の場合は貧血治療
  ・嘔吐、食欲不振、悪心の治療
  ・輸液による水和状態の維持

Stage4の治療
 ・Stage3の治療に加えて
  ・リンを6.0 mg/dLに維持
  ・栄養チューブの設置を検討
  ・透析、腎臓移植の検討

お兄さん
お兄さん
難しそうですね。

Rin先生
Rin先生
ではステージごとの治療ではなく、症状ごとの治療をみていきましょう。

脱水に対する治療

慢性腎臓病では脱水してしまうことが多く、脱水は腎臓病を悪化させる因子にもなります。

お兄さん
お兄さん
腎臓病のせいで脱水しちゃうのに、その脱水のせいでさらに腎臓が悪くなっちゃう。まさに負のスパイラルですね。

Rin先生
Rin先生
本当にそうですね。だから慢性腎臓病の猫は脱水させないようにすることが必要なんです。

猫が飲みたい時にいつでも新鮮な水を飲めるようにしておくことが必要です。このことは非常に重要なので『自宅でできること』で詳しく話します。

猫が自分で水を飲んでいても脱水してしまう場合は、輸液が必要になります。輸液としては皮下補液と静脈点滴がありますが、慢性腎臓病の管理は長期に渡るため皮下補液をすることが多いと思います。皮下補液の投与間隔や量はそれぞれの個体によって大きく変わります。

お兄さん
お兄さん
皮下補液をご自宅でやっている方もいらっしゃいますよね。

Rin先生
Rin先生
そうですね。皮下補液の投与間隔が短くなると通院が大変だったり猫のストレスになることもあるので、自宅で皮下補液をしていただくこともあります。

貧血に対する治療

正常な腎臓からは造血ホルモン(エリスロポエチン)が分泌されていますが、慢性腎臓病では造血ホルモンの分泌が低下します。さらに、食欲不振からの栄養障害、赤血球の寿命短縮、胃腸障害に伴う炎症や出血のために徐々に貧血していきます。
貧血はゆっくり進行していくために貧血症状としてほとんどわかりませんが、重度に進行すると症状が現れます。ヘマトクリット値が20%未満の場合、造血ホルモンの注射が推奨されています。

高血圧に対する治療

慢性腎臓病の猫の20%は高血圧になっているという報告があります。高血圧はタンパク尿を引き起こし、タンパク尿は慢性腎臓病の悪化させます。さらに、高血圧は網膜に影響を与えて高血圧性網膜症となることがあります。心臓や中枢神経にも影響します。
治療は降圧剤の内服になります。急激に血圧を下げることで腎機能が悪化してしまうことがあるので、低用量から初めて血液検査の結果や血圧をみて用量を増やしていきます。

タンパク尿に対する治療

タンパク尿はそれ自体が細胞を障害し慢性腎臓病を悪化させます。尿タンパク/クレアチニン比(UPC)が0.43以上の場合と0.43未満の場合では、前者の生存中央値が281日であるのに対して後者が766日と大きな差があると報告されています。
このことから猫でタンパク尿の場合は治療が必要になります。
基本的なタンパク尿の治療は食事療法と薬によるものになります。

高リン血症に対する治療

慢性腎臓病ではリンの排泄能が低下し血中リン濃度が上昇し、二次性上皮小体機能亢進症を誘発します。高リン血症や上皮小体機能亢進症は慢性腎臓病を悪化させる因子となるため治療が必要になります。
治療としては、輸液によるリンの排泄促進、食事療法によるリンの摂取制限、リン吸着剤によるリンの吸収抑制となります。

その他の治療

低カリウム血症は腎臓からのカリウム排泄量が増加することや、食欲不振から食事からのカリウム摂取が減少することで起こります。低カリウム血症の猫では頭を上げることができずにうつむいた姿勢をとることが見られます。カリウム剤の内服が必要になることもあります。
慢性腎臓病では胃腸炎を起こしやすくなっています。胃腸炎症状が出ている場合は対症療法が必要になります。

食事療法

食事療法は慢性腎臓病治療の主軸と言ってもいいかもしれません。
食事療法の目的は、

  • 尿毒症の軽減
  • 体液、電解質、ビタミン、ミネラル、酸塩基平衡の異常を抑制
  • 栄養状態の改善・維持
  • 慢性腎臓病の進行抑制

となります。Elliotらの報告によると慢性腎臓病で一般食を食べていた猫の中央生存期間は264日だったのに対し、腎臓療法食を食べていた猫は633日だったとしています。また、Plantingaらの報告でも明らかに生存期間が伸びています。

お兄さん
お兄さん
えっ!?療法食を食べるだけでこんなに寿命が伸びるんですか!!

Rin先生
Rin先生
慢性腎臓病は食事に大きく影響されということですね。

家でできること

療法食を食べてもらう工夫をする

先ほども話しましたが、慢性腎臓病の治療の主軸は食事療法です。
いかに療法食を食べてもらうかがポイントです。

・食欲があるうちに療法食へ切り替える
腎臓病が進行してくると少しずつ食欲が落ちていきます。その段階での食事の切り替えは難しいことが多いので食欲があるうちに切り替えていきましょう。
切り替える際にも一気に切り替えるのではなく、今現在食べている食事に少しずつ足していき数日から数週間かけて療法食の割合を増やしていくのが良いでしょう。

・ドライが好き?ウエットが好き?
もともと食べていた食事がドライフードであった場合はドライフードの療法食から試してみるのが良いでしょう(ウエットの場合はウエットから)。

ただし、それを試して食べなくても諦めないで下さい!!!

ドライフードの形状が違う(違うメーカーの療法食)だけでも食べることがあります。
ドライフードを少し煎ると食べることがあります。
ドライフードにお湯を入れてふやかすと食べることがあります。
ふやかす際にお湯でなくチキンスープなどで風味づけするのも方法です。
好みが変わっているのかもしれません。ドライ⇄ウエット変えてみるのも方法です。
ウエットフードなら温度を変えてみる。多くの猫で少し温めてあげたほうがよく食べます(もともと肉食動物ですから)
山の形になるように盛ってあげると上の方からガブッと食べる猫がいます。形が崩れると食べなくなり再び山の形に盛ると食べる。。。その繰り返しです(笑)

などなど
他にも工夫はあります

お兄さん
お兄さん
色々工夫できることがあるんですね。

Rin先生
Rin先生
もっともっと工夫できることはあります。どうすれば食べてもらえるか猫目線で考えましょう。

食事自体は食べたいのかも!!
鼻が詰まっていると匂いが嗅げなくて食欲が落ちます。
口が痛いと痛みで食べません。
これらはかかりつけの獣医師に相談するようにしましょう。

・食器にこだわる
もともと食べていたお気に入りの食器があればそれがいいと思います。
できれば食器は少し大きめで猫のヒゲが当たらないようにしたほうが食べます。
ときどき食器ではなく直接床に置いてあげたほうが食べる猫がいます。

・場所にこだわる
もともと食べていた場所で食べない時は場所を変えてみるのも方法です。
できれば静かな場所で安心できるところがいいです。
他にも猫がいたり犬がいる場合は一人で食べられる場所であげてみてください。
人に見られていると食べない猫もいます。

水を飲んでもらう工夫をする

・水はいつも新鮮なものに
少なくとも1日2回は交換しましょう。
埃や毛が浮いている水より新鮮で綺麗な水を好む猫が多いです。

・水飲み場を工夫する
理想は数カ所の水飲み場を作ってあげることです。
いつでも水を飲めるようにしてあげましょう。
トイレの近くや騒がしいところは避けて下さい。
風呂場や洗面台の水が好きな猫もいます。
タイル床にある水が好きだったり、流れている水が好きだったり。
蛇口から流れくるの水をペロペロとなめる姿をよくみます。蛇口からポタポタ水を垂らしておくのも良いでしょう。
好きな場所を探してみて下さい。

・器にこだわる
小さすぎる器はお勧めできません。
ステンレス製、プラスチック製、ガラス性、陶器製など様々な材質がありますが、

一番のオススメは陶器製

です。陶器の器に変更しただけで水をよく飲むようになった猫が多いです。
水がまろやかになるのでしょうか?はっきりしたことは分かりませんが。。。

深い器よりもフラットなものが良いです。
できればヒゲがあたらない器が良いでしょう。

・器の高さを考える
慢性腎臓病の猫は高齢なことが多く関節炎があったり筋力が低下しています。
床に置いてある器から水を飲むときに、ひじを曲げたり頭を下ろしたりが大変です。
器の下に台をつけて高くしたほうが飲みやすいでしょう。

食器 猫 ヘルスウォーター ボウル L

食器 猫 ヘルスウォーター フードボウル L

・好きな水を探す
水といっても水道水、ミネラルウォーター、水素水など様々です。
どんな水が好きかみつけて下さい。
ササミや魚の煮汁を使ってみて風味をつけるのも良いでしょう。(水が傷みやすくなるので注意が必要です)

・水の温度を考える
ぬるま湯の方が好きな猫が多いです。
逆に氷が好きな猫もいます。場合によっては味(風味)付の氷を作ってあげるのも良いでしょう。

・食事に水をたす
ウエットフードに少し水を足したり、ドライフードをお湯やササミの煮汁でふやかしたりすることで少し水分補給ができます。

ストレスフリーの生活に

できるかぎり猫がのんびり過ごせる環境を整えましょう。

・トイレは数カ所
人間でもトイレに入っている時に次の人が待っているとゆっくりできません(笑)
慢性腎臓病の猫ではおしっこが多くなりトイレでの排泄時間が増えます。
また、便秘傾向のことが多く便をする際も時間がかかります。
のんびりと排泄できる環境を作りましょう。

複数の猫がいるご家庭ではトイレは頭数+1の数が必要です。

さらにトイレは並べるのではなく、できるかぎり見えないように離して置くと良いでしょう。
フード(囲い)がついたトイレに変更するのも他の猫に邪魔せれず、人に注目されることもなく一人で安心して排泄ができます。
トイレ砂も好みがあるようです。
お気に入りのトイレを作ってあげて下さい。

・お気に入りの場所
安心してゆっくり寝られる場所を作ってあげましょう。
もともと大好きな場所があったり、大好きなベッドがあればそこから動かさないようにしましょう。
配置を変更してしまうことで不安になります。

・病院に行く際に
慢性腎臓病であれば定期検診や皮下補液で病院に行く機会が増えます。
(病院が大好きな猫もいますが)ほとんどの猫にとって病院に行くことはストレスです。
病院に行く際もできるかぎりストレスを少なくするために、お気に入りのタオルや毛布があればそれと一緒にキャリーに入ってもらうと良いでしょう。さらに、診察する際もそのタオル・毛布を敷いてあげるとストレスが軽減できます。

猫の慢性腎臓病 治療編
まとめ

・慢性腎臓病の治療目標は
  進行を遅らせ、生活の質をあげること

・治療の主軸となるのは食事療法

・脱水させないようにすることが大事

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