『風邪』という単語は誰でも聞いたことがあるし、ほとんどの人が風邪になったことがあるのではないでしょうか?
でも、
『風邪』って何?
と聞かれて答えられますか?
熱がでて、だるくて、、、
鼻水が出て、咳もでる?
今回は風邪についてです。
猫にも『猫風邪』と呼ばれるものがあります。
風邪についてRin先生教えてください!!
もくじ
風邪の症状
人の風邪
人の”風邪”は多くの方が経験あるものだと思います。
数日間、だるくて辛い症状が続きます。
皆さんが知っている”風邪”は医学的には
“かぜ症候群(Common Cold Syndrome)”
と言います。
原因の多くはライノウィルス、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス等のウイルスによる感染症です。
主として、上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)に感染が起こり、
鼻水・鼻づまり・咽頭痛・嗄声(声枯れ)・咳嗽・喀痰、
さらに
発熱・頭痛・全身倦怠感(だるさ)・食欲不振
などの全身症状があらわれます。
自身の体力と感染したウイルスの種類などにより炎症の程度も違いがみられ、さらに細菌感染を伴うこともあります。
感染が波及して気管支炎・肺炎や中耳炎などにも及ぶことがあります。
それは2次的に細菌感染による扁桃炎になってしまってるんですよ。
風邪はウイルス感染がメインですが、細菌感染もあります。
つまり、
風邪はウイルス(や細菌)が主として上気道(鼻、咽頭、喉頭)に感染して起こる症状のことです。
猫風邪の症状
猫の風邪も
ウイルスなどによる上部気道感染症です。
- くしゃみ・鼻水・鼻づまり
- 食欲不振
- 結膜炎・流涙・目やに
- よだれ・口内炎・舌炎
- 発熱
- 呼吸困難
くしゃみ・鼻水・鼻づまり
まさに人の風邪と同じ症状です。
鼻水・鼻づまりが酷くなると匂いが嗅げなくなるために、食欲不振が助長されてしまいます。
結膜炎・流涙・目やに
猫に感染したウイルスや猫クラミジアは結膜炎を起こします。
結膜炎のために目やにが出て涙が増えます。涙は鼻涙管を通って鼻に流れますが、鼻炎で鼻水・鼻づまりの状態になっていて鼻涙管が詰まっているので涙が溢れてしまい流涙が多くなります。
猫風邪の原因は?
原因となっているのは、
猫カリシウイルス
猫クラミジア
ボルデテラ
マイコプラズマ
などがありますが、猫ヘルペスウイルスⅠ型と猫カリシウイルスによる感染が大部分を占めます。混合感染の場合もあります。
次に猫ヘルペスウイルスⅠ型と猫カリシウイルスの感染について少し詳しく勉強してみましょう。
猫ヘルペスウイルスⅠ型
猫風邪の原因としてもっとも一般的なのがこの猫ヘルペスウイルスⅠ型感染です。
ヘルペスウイルスに感染すると
鼻炎と結膜炎を主症状として上部気道炎
が起こるために、猫ウイルス性鼻気管炎・FVR(feline viral rhinotracheitis)と呼ばれることもあります。
風邪をひいている猫の分泌物(特に鼻水)に多くのウイルスが排泄されているために、それを(口や鼻、目の粘膜から)取り込むことで感染します。
感染すると鼻の粘膜でウイルスが増殖して、結膜、喉、気管・気管支へ波及します。
特に若い子猫では要注意!!
細菌感染を併発することが多く、
抵抗力の低い子猫や高齢猫、持病のある猫では重症化して死に至ることもあります。
症状改善には1〜2週間かかります。
ヘルペスウイルスに感染すると、感染後24時間からウイルス排泄が始まり、1〜3週間続きます。
ヘルペスウイルス感染の問題としては、
回復した後もウイルスが神経節に潜伏感染
して生涯にわたりウイルスを保持するということです。
潜伏感染していることを証明することは難しく、ストレスや抵抗力が弱くなると潜伏していたウイルスが活性化して症状が再発します。
猫によっては急性感染後に慢性鼻炎になってしまったり、結膜炎が角膜潰瘍を伴い慢性の角膜分離症となってしまうこともあります。
- 症状は、急性鼻炎・結膜炎、発熱、沈鬱、食欲不振
- 多くの猫が回復しても潜伏感染しウイルスを保持
- 保護施設やブリーダーなど多頭飼育では感染が拡大
- 特に若い子猫では死に至こともある
- 治療は手厚い看護、支持療法が主体
- 細菌の2次感染を防ぐために抗生物質を使用
- 抗ウイルス薬を使用することもある
- ワクチン接種で予防を行う
猫カリシウイルス
猫カリシウイルスは頻繁に変異して、感染した場合の症状もヘルペスウイルス感染と同じような発熱やくしゃみ・鼻水、流涙などの上部気道炎に加えて、舌・口腔内の潰瘍、肺炎や跛行も起こります。
特に舌・口腔潰瘍は頻繁にみられます。
最近では強毒性猫カリシウイルス感染症が報告されていて、
この場合は致死率が67%以上となる怖い感染症です。
猫カリシウイルスは伝播力が強く、感染した猫から長期間ウイルス排泄し、排泄されたウイルスも長期間感染力を保持し続けます。
カリシウイルスは多くの消毒薬が効かず、消毒には次亜塩素酸ナトリウムが必要になります。
感染経路の主なものは感染猫との直接接触ですが、環境中にある感染力のあるカリシウイルスを(口や鼻、目の粘膜から)取り込むことで感染します。
ケージや食器、動物病院や獣医師・看護師、
飼い主様自身に付着したウイルスからも感染します。
通常、ウイルス感染すると体には抗体ができて次にそのウイルスが感染しようとしても抗体がやっつけてくれます。
でもカリシウイルスは頻繁に変異するので感染から回復しても、変異したウイルスにより何度でもカリシウイルス感染を起こすことがあります。
多数の猫が一緒に飼育されている場合は爆発的に流行すると言われています。
小規模集団では感染率は約10%なのに対し、大規模集団では25〜40%となり時に90%まで高い感染率を示すことがあります。
どうやって感染するの?
猫風邪では感染した猫の分泌物(鼻水や涙、ヨダレなど)に多くのウイルスが排泄されます。
クシャミや咳をすれば分泌物とともにウイルスが飛ぶことになります。
これらの分泌物に直接接触すると粘膜から感染します(接触感染、飛沫感染)。
空気中に舞い上がって浮遊しているウイルスでも感染します(空気感染)。
具体的には、
くしゃみがかかる
人が風邪をひいている猫のお世話をした後に健康な猫を触る
同じ空間で生活する
次に風邪には流行する時期があるけどその理由についても考えてみましょう。
なんで冬や季節の変わり目に風邪が流行るの?
低温・乾燥好きのウイルス
猫風邪の原因となる猫ヘルペスウイルスⅠ型は、比較的感染力が強く気温によって
4℃の場合:5ヶ月間感染力を維持
25℃の場合:1ヶ月間感染力を維持
となっていて、冬場の方が長く感染力を保った状態で環境中にいます。
カリシウイルスは消毒液に抵抗性を示し、次亜塩素酸などの強い消毒液で消毒しないと長期間環境中に感染力を保持した状態でいます。
冬場には空気が乾燥しています。
感染猫からの分泌物が消毒されずに残っていると、
分泌物も乾燥し、ウイルス自体からも水分が減ることで軽くなり
ウイルスが空気中に飛ぶ・浮遊することになります。
猫の抵抗力
冬場であれば体は体温を上げようとして体力を消耗します。
もともと体力がない子猫や老齢猫、基礎疾患のある猫ではさらに体力が低下してしまいます。
喉や鼻、呼吸器系の粘膜は乾燥すると抵抗力が落ちてしまいます。
このようなことで冬場では猫も風邪をひきやすい状態になっています。
季節の変わり目では、温度変化が激しく自律神経のバランスを崩して抵抗力が下がります。
このことでも猫は風邪をひきやすくなります。
診断は?
身体検査
発熱している猫に上部気道感染(鼻水・くしゃみ・目やになど)の症状があれば、猫風邪を疑います。
多くの病原体が同じような症状を引き起こします。また、混合感染も多いために症状からだけでは確定診断は難しいです。
くしゃみ、重度の呼吸器症状、結膜炎や角膜潰瘍など眼症状も伴っていれば猫ヘルペスウイルスⅠ型感染を疑います。
口腔の潰瘍病変もあった場合は猫カリシウイルス感染を疑います。
涙や鼻水が膿性であった場合は細菌感染も起こっている可能性があります。
PCR検査、ウイルス分離、細菌培養、クラミジア分離
ヘルペスウイルスやカリシウイルスの感染症では確定診断にはPCR検査やウイルス分離が必要になりますが、これらの検査の結果だけでの判断はできません。あくまでも症状なども合わせて総合診断が必要になります。
細菌感染を疑う場合は、培養検査を行うことで適切な抗生物質の選択ができます。
どの検査を行うとしても検査結果が出るまでには時間がかかるために、結果が出る前に治療を開始します。
治療
人の風邪と同じで軽度の場合は自然治癒します。
症状が改善するまでには1〜2週間かかります。
支持療法
風邪をひいた猫は発熱のためにだるくて、鼻水・鼻づまりでニオイが分からずに食欲がありません。口腔の潰瘍があればなおさら食べません。
特に子猫や老齢猫では体力がないために栄養補助が必要になります。
食欲増進剤を使用したり、強制的に食べさせたり、必要であれば栄養チューブを使って栄養補助をすることがあります。
脱水をしている場合は点滴治療が必要になります。
細菌感染が疑われる場合や2次感染予防のために抗生物質の治療を行うこともあります。
さらに、目やにや鼻水も膿性のものが多く抗生物質も使用します。
インターフェロン治療も有効です。
抗ウイルス治療
猫ヘルペスウイルス感染症を疑う場合には抗ウイルス薬の全身投与や局所投与(目薬)をすることがあります。
自宅でできること
手厚い看護が一番です
鼻水が固まって鼻がふさがっていたら、ふやかして取ってあげることでニオイがある程度嗅げるようになります。
目やにで目が開かない場合は、ふやかして取ってあげて下さい。
病院で点眼薬を処方してもらっている場合は、それを点眼だけでなく点鼻薬としても利用できます。
食事も食べるものを探しましょう。
ニオイがわかりづらいので少し温めた食事の方がニオイが分かりやすいですし、美味しくなって食欲も湧きます。
子猫や老齢猫の場合は、ミルクや流動食を少しずつ口の中に入れてあげる必要があるかもしれません。やり方は獣医師や動物看護師に直接教わるのがいいでしょう。無理にあげると誤嚥してしまうかもしれないので注意が必要です。
動物が安心してストレスを軽減した方が早く治ります。
風邪をひいている猫は隔離がベスト
複数の猫が同居している場合、一頭が風邪をひくと周りのみんなにも風邪がうつります。
できれば風邪が治るまでは別の部屋で生活させることで他の猫への感染が予防できます。
消毒も忘れずに
環境中に残っているウイルスでも風邪をひくために使用した食器や部屋の消毒が必要になります。
さらに、風邪をひいている猫に触れた後に健康な猫に触れることで感染することがあるために手の消毒も必要です。
もしも風邪をひいている猫がいる場合は、その猫のお世話を最後にするといいと思います。
猫風邪の原因でもっとも多い猫ヘルペスウイルスⅠ型は、多くの消毒薬や洗剤で感染力が無くなります。
一方、カリシウイルスは強い消毒液が必要になります。
加湿も効果的
ウイルスは低温・乾燥でより長期的に感染力を保持し、
空気中に浮遊しやすくなるために
室内を加湿することも予防に効果的です。
シャープ SHARP KI-JS40-W 加湿空気清浄機 ホワイト系 [適用畳数:18畳 /最大適用畳数(加湿):12畳 /PM2.5対応][KIJS40 プラズマクラスター] |
予防しておくことが重要です!!
混合ワクチンは症状の軽減に有効です。
ウイルスの感染を防ぐわけではありませんが、症状は軽減できます。
子猫の際には、コアワクチンの摂取を必ず行いましょう。
6〜8週齢の際に1回目。2〜4週おきに摂取を行い、16週齢以降に初年度の最終接種とするのが理想です。12ヶ月後にも追加摂取を行います。
衛生的な環境で、
ストレスフリーの生活が最大の予防になります。
- 猫風邪はウイルスなどによる上部気道感染症
- 発熱・くしゃみ・鼻水・口内炎などが起こる
- 原因の多くは猫ヘルペスウイルスⅠ型、猫カリシウイルスによるものだが、多くは混合感染によるもの
- 冬や季節の変わり目に多い
- 治療は栄養補助や点滴、抗生物質で行う
- 手厚い看護が必要
- 混合ワクチンにより予防ができる